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2−1 大学と対角
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悩む。
めちゃくちゃ悩む。
俺は今ホテルの洗面台の前で悩みに悩んでいた。
何に悩むかって、大学に行くかいかないか、だ。理由を聞かれれば、今日は休講で行かなくてもいいけど、研究室に忘れ物をしたのを思い出したからだ。
その忘れ物は友人に借りているもので明日までに返さなきゃいけない。じゃあ明日部屋に取りに行って返せばいいじゃん、って感じだけどそういうわけにはいかなかった。
「あのクソ野郎ぜってぇ捨てる…」
置いてったのが昨日だから、猶予は1日。研究室のあの野郎はぜってぇ俺のもんだとわかると捨てる。何が何でも捨てる。その猶予が1日だった。
「くそ…折角休みだってのに…」
結局悩むことなんて何も無い。大学に行かなければ行けないのは端から決まっていた。
そういうことで、俺はホテルの部屋を出てフロントはと向かった。金を払おうとすれば既に―もちろん2人分―支払われていて、アイツの謎が深まったのは言うまでもない。
だって1人1泊、軽く5万以上はする部屋だったのだから。
□□
車の中で俺は今朝のことを思い出していた。
だけどそれは少し語弊があって、昨夜から今朝のこと、と言った方がより正確だ。そしてシンのこと、とと付け加えればさらに正確だ。
思い出すのはもちろんシンの乱れた様子と声、そして表情だ。
猫のようにしなやかでいて、けれど今にも折れてしまいそうな、鶴を思わせる雅ささえ兼ね備えている。
シンはそういう子だった。確かに顔は整ってはいるけど、絶世とか傾国とか、そこまでではない。モデルにはなれるだろうけど。
なのに。
なのに、綺麗だと思った。
突き上げる度に跳ねる染めた金髪も、色に潤んだ瞳も。全部。
「ヤッバイな……」
別にどうというわけでもない。ただもう一回会いたい。それだけだ。
それにシンのことならいくらでも描写ができる。
仕事ははかどりそうだ。
「それに、見ちゃったしな…」
彼のスマホにメールが届いたのは俺がシャワールームから出てきて、シンを起こさないようにベッドに座った時だ。
『貴式教授』
その珍しい名前はよく見知ったものだった。それはある意味もう居場所を知ってしまったようなもので。
だが、それだけじゃない。
部屋を出る直前。額にキスをした。そのすぐ、後。
彼が呟いていた"もう見たくない"という言葉も。
俺は聞いてしまっていた。
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