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入ったのはマークイズだ。
そこの二階には俺の好きなブランドであるZARAがある。躊躇もなにもなく入れば、店内のシックな雰囲気にあった曲と、少しバニラの香りのするアロマが感じられた。
秋物の新作を見て、黒のテーラードと革パン、紺の薄手のセーターを手に取った。
…あと、は………
コートか。いや、ジャケット買ったからいいか。でも1着あると便利だし…
俺は少し場所を移動してコートのあるところに行った。超ロングコートとかいろいろあって、やっぱり見ると欲しくなる。
「…どれにしようか……」
「お客様は細身でいらっしゃるのでこちらのコートはいかがでしょうか、ベージュのトレンチは着回しが効きますよ」
「は……?」
いきなり話しかけられて、ここの店員はそんな奴だったかとそっちを見れば
「なっ、マコトっ!?」
「やぁ、シン。今朝…いや、深夜ぶりかな」
「お前、ストーカーか?」
「出会い頭に酷いなぁ。たまたまだよ。た・ま・た・ま。俺も秋物とかが欲しくてね、お昼食べに来るついでに寄ったんだ」
そう言いつつ俺にコートをあてる。
マジで、こいつ、何モノ!?
ありえない、いやありえなくもない。けど限りなくありえない。なんでこんな、漫画みたいな展開になってんだよ。おかしいだろ!?
…だって、なんで
そんな疑問の言葉ばっか。頭に出てきては消える。小さく「ありえない…」ともう一度呟けば
「ありえなくはないよ。だって俺、ここら辺に住んでるし」
あっ、そ。知りたくなかったね、その情報。家が近いとか本当勘弁してほしい。だって、そうしたら、今日みたいにまた会ってしまう可能性が跳ね上がる。最悪にも程がある。
…前に一回。
客に家を特定されて引っ越した騒ぎがあった。それ以来家の近くで寝ないようにしていて、だっていうのに昨日の俺はそれを忘れていた。
…最悪………
「…あん」
「あんたじゃない。マコト」
「…めんどくせぇな…ったく、マコト、仕事は?こんな真昼間に、しかも平日にマークイズって中々だぞ」
「もう今日の分は終わってるんだ。締め切りとかも近くないし。それよりさ、シン。一緒にお昼どうだい。そのあと俺の家、っていうのは」
「…昼はいいよ。だけど夜はやだ」
「…なんで」
「先約。明々後日ならいいぜ、その代わり今度は金取るけどな」
そういうとふむ、と思案する。でもすぐにじゃあと笑った。マコトの提案はこうだった。
「明後日。俺とシンが会うのは明後日の夜、昨日のホテルのロビーで。1日早めてもらう代わりにその服代と昼ごはん代を出そう。もちろん明後日にも金は出すよ」
…中々美味しい。
だけどそれだと取りすぎなので
「服代はいらない。その代わりちょっと美味しいとこ連れてってくれよ」
「そうしよう。だけどそれだと俺の気が済まないから服代は折半だ」
だと言ったくせに、服は俺が持っていたのからさらに追加されて服代は跳ね上がり、いいんだか悪いんだかよくわからなった。
レジでマジか、という俺の顔を見たマコトはカードで一括払いをしてしまい、マジでありえない、という俺の言葉はマコトの笑顔でかき消された。
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