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へぇ、と息をつく。
「寝てれば、年相応かな」
艶やかな白い肌は金髪の下にある。長い睫毛に縁取られ、今は閉じられている瞼の下には紺の目がある。白いシーツの下に、その子はいた。
今日店に行ったのは気まぐれだったけど、まさかこの子がいるとは思いもしなかった。人気商品のこの子は、あのバーのみならずいろんなところで買われるからだ。
…だから気付くよね
何かあったんだろう、って。
「まぁ随分と泣きそうな顔してたし……てか今泣いてるし」
後始末をし終わって、ベッドに寝かせればまるで死にに行くかのように寝入っていた。時折小さな寝息が聞こえて、それがかろうじて生きている証拠みたいだ。
枕に涙が落ちる。
それを見ていれば自然と手が動いた。
「君も俺も、ロクな恋愛をしてないみたいだね」
あのバーに通う時点でそうか。まぁそれがちょうどいいんだろうね。
…あ、そう、か……
タクシーの中で聞かれたこと。
『俺に恋人って、できると思うか』
その質問の答え。俺は今思いついた。
———頭を撫でてやれば口端に笑みが浮かぶ。
可愛いのにねぇ、せっかくいい容姿してるんだからもっと活かせばいいのに、そう思うけどこの子はそれをしない。理由は知らないけど、何かあるんだろう。
モデルでもやればいいのに。
そうしたら俺がバックアップしてやって、どんどん売れさせてやるのに。君はもっとたくさんなや人と関わった方がいいよ。
そうすれば、
「そうすれば…君の名前を呼んでくれる人がいるかも、しれないのにね……」
シン
あえて俺はその名前を言う。
シン。音だけ聞けば英語の"sin"と同じだ。その英単語の意味は『道徳上の罪』。俺の名前の深幸の深も同じ読み方ができる。
シン
不思議だ、そして面白い。観察するにはとてもいい対象だ。だから俺は時折あのバーに行く。
「おやすみ、シン…いい夢を」
額にキスを落として隣に入る。背に少しシンの温もりを感じつつ、俺は暗闇へと落ちて行った。
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