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4-1 白い美術館
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カーテンに夜の黒が透けている。
開けっ放しの窓に白いカーテンは吸い込まれて、窓枠を縁取る。そして揺れた。部屋の明るさと時折見える黒がはっきりとわかれてて、俺はぼぉっとしながらそれを見ていた。
ガチャン、と
背後で音がする。そしてただいまという声も。見なくても誰かはわかる。新だ。
「なんだ、起きてんのか」
鞄を床に置くと、新は後ろから俺の顔を覗き込んできた。ソファの背もたれに肘をついて、片方の手はさりげなく肩に回される。
「だいぶ寒くなったなぁ…って、お前、髪濡れっぱじゃん、ちゃんと拭けよな。風邪引いてもしらねぇぞ」
「うっせぇ…飯あるけど、あっためる?」
「んー、頼む。俺の奥さんは甲斐甲斐しいねぇ」
「誰が奥さんだボケカス」
「これで口が悪くなけりゃ満点くれてやるのに」
遅くなるって言ってたあんたの為に作った飯なんだがなぁ、その減らず口がなかったらこっちだってもうちょいマシな受け答えしてやるのに。
…第一男だぞ、俺は、奥さんてなんだ奥さんて
笑いながらネクタイを外し書斎に向かう。その背を見てて思うけど、本当、画になるよな。かっこいい。けどもうおっさんって言ってもいい歳だ。
…不毛すぎて笑える
まぁいい。俺はキッチンに向かってラップがかかっている皿を電子レンジに突っ込んだ。今日の夕飯は肉じゃがとほうれん草のおひたしだ。
□□
「あいっかわらずスキルたけぇな。この肉じゃが美味いんだけど」
「そりゃよかった。作りすぎたから食え」
「おー、いいけど、あ、そうだ。ちょっとパックに詰めてよ。明日大学持ってっからよ。お前の料理たまに持ってくと好評なんだよなぁ」
「ふぅん。じゃあそうする。あとで出しといて」
「どこに入ってる?食器棚?」
うん、と頷く。眺めていれば、美味いと何回も言って頬張り、こっちの目線に気がついた。なんだよとニヤニヤして言われるけど別に、とぶっきらぼうに答える。
「お前、結構俺の顔好きだよな」
「自意識過剰」
テーブルと同じデザインの椅子から立ち上がり、俺は洗面所に行く。さっき髪を乾かせと言われたのを思い出したからだ。
…まぁ、図星、だけど
ゴァ、とドライヤーから送られてくる熱風は、少し冷えた体を温めた気がした。鏡の中の自分を見ながら髪を乾かしていると、もう1人別の人間が視界に入る。
「たぁーつき、俺を1人にすんじゃねぇーよ」
「キッッショ。あんた本当恥ずかしいよな。自覚あんの」
「ない。なぁ、明日休みだろ」
「確か。なんで」
「出掛けようぜ。久しぶりにさ。横浜でも行かね」
するりと俺の手からドライヤーを取る。俺よりも頭一つ分くらい背が高いからしゃがむ必要はない。
アラタは櫛を使って丁寧に乾かしつつ、もう一回「行こう」と言ってきた。明日は土曜日だ、まぁ俺も特に予定はなかったし、新が休みなら別に行ってもいい。
そういえば、じゃあ中華街行こう、小籠包と肉まんとか食おうぜと無邪気に笑った。
「あ、でも肉じゃがは。大学持ってくんじゃなかったのか?」
「んあ?あー、やっぱやめた」
「なんで、本当に食えんのかよ」
「おう、意地でも食うぞ。だってアレ、本当に美味かったからやっぱ俺以外に食わせたくねぇんだよね」
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