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て、ことで。
今日俺たちは横浜に来ている。
新横浜駅からみなとみらい線に乗り換えて中華街へ、そんで新幹線の中で調べた店を目指して歩いてる最中だ。
さすが土曜日の観光地。人が多い。
元々そこまで広くない中華街だ、余計に窮屈に感じた。
「迷子になんじゃねぇーぞ、探すの面倒」
「そりゃこっちのセリフだ、俺よかあんたの方があっちへフラフラこっちへフラフラ、今更珍しいもんでも」
「お!工芸茶だ!買って帰ろうかなぁ…」
「……言ってるそばから…!」
ガキか!とツッコミを入れたいのを必死に抑える。さすがにこの往来で叫びたくはない。俺はため息をつきながら新についいき店へと入る。
新は何気(でもないけど)凝り性で、お茶とかすごい種類が棚の中に入っている。もちろんティーセットも揃っていて、しかもそれが和洋中揃ってるっつーから恐ろしい。
…しかも全部取り寄せ……!
まぁでも、俺も茶は好きだから新が美味いのを用意してくれるのは楽しいし嬉しい。新が茶を揃えるなら、俺は酒、って感じだ。
「な、これなんかどーよ、おもしろくね?」
「おもしろいっつーか、綺麗、っつーか。へぇ、白い花なんだ」
新の視線の先には開いたところの写真があった。見れば白い花が浮いていて、これお茶なんだなぁと感心させられる。
「菊だってよ。すげぇ、お茶ってこんなこともできんのな。なぁ、うちにガラスのポットってあったっけか」
「ああ、うん。透明なやつだろ?確かあるはず。なに、買うのか」
「おー、やったことねぇからさ。興味はあったんだけどいざ買う機会がなかったんだよなぁ。へぇ、これ緑茶なんだ。ジャスミンばっかだと思ってた」
3つ4つ小さな茶の玉が入った袋を手に取り、鼻を近づける。確かにいい香りがして、飲んでみたいかなと思った。
値段を見れば、そこには一緒に名前が書いてあって
「き、きんじょ…てん…?なんて読むんだ?」
錦上添花、とある。けれど読めない。決して俺の語彙力が低いんじゃない。頭を悩ませていると新が覗き込んで来てあぁ、と笑った。
「ジンシャンティエンファ。錦の上に花を添える、つまり美しいものの上にさらに美しいものを乗せるっつーこと、転じてめでたいことが重なるって意味。要するにお前が俺に騎乗位やってる感じだな」
「おまっ!!!!!どんな例えだ!!!人に聞かれたら俺もうここ来れないんだけど!!!」
「ばぁーか、誰も聞いちゃいねぇよ。つか過剰反応する方が変な目で見られるけど?」
言われて、俺は平静を取り戻そうとした。
…てかその例え、かなりナルシだな!!??
とにかく!と俺は茶葉の入った袋を渡してレジを指差す。
「買うならとっとと買ってこいよ!変なこと言ってないで」
「へぇへぇ、わかりましたよ。お前は何か欲しいもんあった?」
「ない、それより早く小籠包食べたい」
可愛げより食い気かよ、そう呟きながら新はレジへと行った。俺は店の外に出て待つことにする。もう少しで12時という昼飯開始時刻を迎える街は声が大きくなっていた。
食べ放題やら肉まんやら小籠包やら何やら。
食べていけだの最後尾はこっちだの何だの。
美味しいという声もあれば、あんまりという声も。
聞いていれば少し面白い。俺たちが行く予定の店は美味いといいなぁと思いつつ、目線を横にずらして、何故かこの間の…一週間前のことを思い出した。
…あれからマコトには会っていない。
バーに行っても、時折ホテルの前を通りすがって見ても。何にも、影も形もない。
ひでぇ奴、と。そう思うだけにした。
まだレジに並んでんのか、と店の中を見れば反対側から頭を叩かれて
「こっちだボケ。何ぼぉっとしてんだ。行くぞ」
一瞬腕を引かれて俺はよろめく。なんだかなぁと思いつつ、新の手に持っていると袋の中身がやけに多いことには、気がつかないふりをしといた。
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