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今度の待ち合わせに、マコトは遅れて来なかった。
「久しぶり、シン」
「…久しぶり」
万智のバーでジントニックをあおっているとドアベルが来客を告げた。
見れば、待っていた人間がそこにいる。つい口調が素っ気なくなるのは、安心と、期待からだ。
…来て、くれた…
カウンター席に座っていた俺は隣の席に置いていたバックをどかし、座ればと言う。もちろんマコトは縦に頷いてレディリリーを頼んだ。
レディリリーはこの店オリジナルのカクテルで、シェリーがベースだ。
実はこれ以上情報は公開されていない。万智が真似されたくないとかで誰にも話してなかった。
だから、このカクテルの異名は”ヒメゴト”
さらに転じて
「最近はどう?調子崩してたりとか、ない?」
”セックス”って意味。なんでかって?みんなが隠したいことなんて、それくらいだからだ。
俺はマコトがその意味を知ってることを祈りつつ答えた。
「ヤってないから死にそう」
「…いいらしいね」
「そう?結構これでも瀕死なんだけど」
「ジンかっくらってる時点で瀕死じゃないだろうよ」
そう言って苦笑する。ま、わからんでもない。
俺は鞄からある一冊の本を取り出しマコトに見せた。それを見た瞬間、マコトはびっくりして次の瞬間にはうわぁと身を引いた。
「俺の記念すべき第一冊目の本じゃないか…これ、何年前の本か知ってる?」
「二十年前」
「そん時君は?」
「よくて腹ん中。てかそれ言ったらマコトもだろ。それ出したの15んときじゃん」
「だからだよ…そんな拙い文読まないでくれ…」
いや、15でこんな文かけてたら充分すごいと思うけどな?全く拙くねぇよ。てか本出せてる時点ですごいだろうが。
てか、そんなこと言わせるために持ち出して来たわけじゃない。
「サイン、してよ。ほんとはあの日にしてもらう予定だったんだから」
半分あんたのせいでできなくなったんだし
そういえば、また苦笑いだ。だけど一緒に出したペンを持ち表紙を開ける。さらと流れるようにペンが動いてそこにサインが刻まれた。
「サインだけでいいのかい」
書き終わると薄い紅色のカクテルの入ったグラスを差し出し来た。
…このカクテルには意味がある。レディリリーには、意味がある。
「今ならもれなく、おまけがあるんだけどな」
自分で飲んでいるなら募集中、人に差し出せば、合図になる。
「おまけじゃなくて、本命だろうが」
俺はちゅ、と小さなキスをマコトの頬に落としてやった。
ううん、違う。
したくてしたくてしょうがないほど、愛おしかったんだ。
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