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8-1 ベーコンと目玉焼き、それと
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カンカンと薬缶が音を立てる。
もう沸騰したのか、と俺は後ろのストーブの上に乗せた薬缶を手に取った。
この家、俺と新が住んでるマンションの一室はまだ新しい。
だからもちろん冷暖房設備はしっかり整ってるし、ストーブなんて使わなくても床暖房とかで充分あったかくなった。
だけど、なんとなく俺はストーブのが好きで
このストーブは去年俺が頼み込んで買ってもらったやつだ。
アンティーク調の、少しお高めのやつ。
薬缶を鍋敷きの上に置いて俺はストーブの前にしゃがんだ。
「あったけー……」
朝飯のミネストローネを作って冷たくなった手をかざす。
じんわりと暖かさが広がっていって、まるで氷が溶けるみたいだった。
「………ねっむ…」
まぁ、もう少ししたら冬季休業だし…今日だって昼からの講義だし…
…がんばろ
立ち上がって食材を鍋に突っ込んだ。
で、棚からマカロニを取り出し2人分入れてトマトペーストと水を入れたら、よくかき混ぜる。
うちのトマトペーストは缶のやつじゃない。
俺がきちんと毎回一から作ってる。
潰して漉してちょっと塩と胡椒を。
手間だけどその分美味しくなるんだ。
…まずいの作ったら怒られるし?
ローリエとコンソメキューブを入れつつそう思う。だいたいあいつは文句が多すぎんだ。
人が作ってんだから少しはありがたみを感じろって。
やれしょっぱいだの味が薄いだのなんだの
「毎回毎回よく飽きもせずに…」
俺がそう呟くとほぼ同時に、影が落ちてきた。
そして抱きしめられる。タバコの匂いと少しだけ香る甘い匂い。
「おはよう、辰綺」
「…おはよう、顔洗ってきたのかよ」
「あら、今日の朝飯はミネストローネ?やったねー、俺お前が作ったの好きなんだわ」
「顔洗ってきて着替えたやつじゃないとあげない」
「はいはい、俺の奥さんは手厳しいね」
「……お湯ぶっかけられたい?」
すっと背中がまた寒くなる。仰せのままに、と新が離れたからだ。
俺は戸棚から揃いのティーカップを出…そうとしてやめた。
新のはウェッジウッドのブルーホワイト。
俺はリチャードジノリのサンレモ。
それに薬缶のお湯を注いで温める。その間に茶葉とかを用意しておいて。
ブレッドケースからバゲットを出して切り分け、それぞれのティーカップとセットの皿に乗せる。
あとはスープができれば朝食の完成。
毎日の、始まりだ。
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