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テーブルの上にはスープとバゲッド、紅茶、そしてサラダが並んでいる。
そして前には新がいる。
ぱりっとした白いシャツを着た新は眠そうな目で手を合わせた。イタダキマスと言ってからスプーンを手にするのは育ちの良さを感じる。
「召し上がれ」
そう言ってから俺もスプーンを持つ。
出来は上々、もう少しオリーブを効かせてもよかったかもしれないけど、朝だからこのくらいがむしろちょうどいいかもしれない。
俺は時計を見て時間を確認しつつ食べた。
しばらくすると、新が「なぁ?」と声をかけてきた。
「何?」
「今日の夕飯さ、水炊き鍋食べたいんだけど」
「別にいいよ、じゃあ鳥のぶつ切り買ってこなきゃ…」
「あら珍しい。お前がリクエスト聞いてくれるなんて」
「そうか?一昨日だってシチューが食べたいって言うから作っただろ」
「あれはリクエストじゃなくてテレビでやってたから『食べたいなー』『材料あるからちょうどいい』的なノリだったろうが。あと寒かったし。まともにリクエスト聞いてくれるのはすげぇ久しぶりだぜ?」
「…ふぅん、あ、昼は余ったミネストローネでいいか。付け合わせはパスタな」
「へぇ、何パスタ」
「そうだな…ささみとしめじと…アスパラ。塩な」
相変わらず手が込んでるな、と感心した様子で言う。
まぁ料理は嫌いじゃない。洗い物は面倒だけど新が手伝ってくれるからそこまでしんどくはなかった。
そしてたまにキッチンに来た新と一緒に作ったりもする。
何気にその時間が心地よかったり。新も新で手先が器用だからか結構上手い。
飾り切りなんてお手の物、たまに作ってくれる弁当が無駄に豪華なのはそのせいだ。
で、本人曰く
『同棲相手が料理上手かったから覚えた』
だそうで、その同棲相手っていうのはもちろん俺のことだ。
…何だかなぁ…
どうにもこうにも、やりづらい。
それはともかく、俺は早々に食べ終わる。俺はもう少し時間があるけど新はもう少ししたら大学に行かなきゃいけない。
スープポットに温め直したミネストローネを入れて、手早くパスタを作る。
そして出来上がったら弁当箱に入れ保温のバックに。
新のとこに持ってって渡せば
「ありがと、今度はデザートもよろしく」
と額にキスをされる、
これも、やりづらい理由の一つだ。
新も食べ終わり、ジャケットとコートを羽織り玄関へと向かった。
「あ、ねぇ、マフラー持って来て。多分書斎にあるから」
「はぁ?ったく、準備しとけよな」
そうは言いつつもすぐに取りに行って、白いマフラーを見つける。小走りに玄関に戻って面倒だからそのまま首にかけてやった。
「…冬っていいねぇ…」
「ならそのまま凍え死んでこい。そうすりゃこっちも万々歳だ」
「やだね。家で可愛い辰綺が待ってるから帰んなきゃいけねぇじゃん?」
今度は口だ。軽くリップ音を立ててすぐに離れたけど。
そしてその口は「行ってきます」の音をつくる。
「行ってらっしゃい、コケんなよ」
どうせすぐに大学で会うのに。ったく、どこの新婚夫婦だ。今時流行んねぇぞ。
こんな甘ったるい朝なんて。
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