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「…さいっっあく」
俺の隣で長門がそう呟いた。
新の大学の自室にあるガラス張りのテーブルの上には、長門のもので埋まっている。
教科書やらノートやらスマホやらなんやらかんやら
で、散らかしてる張本人は空の鞄見ながら嘆いている。
「どうした」
「財布無い。多分家に忘れた…」
「そりゃ最悪だな。ご愁傷様」
「しかも鍵もない」
「はぁ!?鍵って、家の鍵だろ?」
「うん。やっばいなぁ」
いややばいどころの話じゃないだろ。
俺がそういうと長門は笑って大丈夫、と言った。
「無くした鍵、使えないから。こないだ鍵変えたんだよね」
「じゃあ今の鍵は?」
「…家ん中」
「なんでだよ!どうやって鍵閉めたっ!?」
「いやーそれが今度のはオートロックでさぁ」
こいつ馬鹿だ。マジで馬鹿だ。どうしようもないくらい馬鹿だ。
ほら、新も笑ってんじゃん。声殺してるけどめっちゃ笑ってるぞ。
俺は呆れてため息を吐く。まぁたまにやらかすのは長い付き合いの中で知ってたけど、今日ほどのは初めてだ。
…しかも、財布無いって…
家の鍵が無くても、財布があれば銀行で金おろしてホテルにでも泊まれたのに。
あ、こいつ飯とかどうすんの。
今気づいたけど。
そしてちょうど長門も気づいたらしい。「飯どうしようっ!?」と急に立ち上がる。そしてそれに反応したのは意外にも新だった。
「うち来るか?特別に辰綺の飯、食わせてやんよ」
「え、マジでっ!?」
「さすがにかわいそうだからなぁ。ついでに泊まってけ。今日明日は寒波が来るらしい」
「恩に切りますっ!!」
「いいだろ、辰綺」
「別にいいけど…」
めっずらし。新が誰かを泊めるなんて言い出すとか。
まぁ今日の夕飯は鍋の予定だったから、ちょうどいいと言えば言い。2人で食べると毎回微妙に余るからな。
まぁそれをアレンジするのも楽しいんだけども。
じゃあ、と俺は左の腕時計を見る。買い物に行くには頃合いだ。今日の講義はさっき終わったので終わりだし。
「長門、買い出し付き合えよ。で、荷物持ちな」
「よろこんでお引き受けさせていただきますっ」
「あ、キムチの素買っといて。ちょうど切れてたわ」
「了解、なんか食べたいのある?」
「うーん、つみれ団子」
「じゃあ。作るかなぁ…。あ、帰ってくんのいつもくらい?」
新はおう、と頷く。
そして
「あったかいご飯食べに今日もすっとんで帰ります」
そう言った。
俺はそれを軽くスルーして鞄を手に取る。
そんなこと、言われなくてもわかってるっつーの。
部屋を2人で出て廊下を行く。長門が冷やかしてきたのも軽くスルーした。ま、拳骨付きだったけど。
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