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白の記憶
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病室の中から呻き声を上げていた。今日、あの子が目を覚ましたらしい。私はさすがに、あの子がいる病室には入れなかった。
受け入れ難い現実に足が竦むと、ただ呆然とした表情で扉の前で佇んで見ていた。中からは悲痛な叫びと言うよりも、痛みに苦しんでいる叫び声が聞こえた。医師や看護婦が急いで廊下を走ると、あの子がいる病室に駆け込んだ。 中からはあの子が、叫びながら暴れている声と大きな物音がした。
私はそんな事をわかっていても、あの子に何もしてやれない自分の『無力』さを改めて思い知った。叫び声に耐えられなくなると、自分の両耳を塞いで病室の前から遠ざかった。薄暗い廊下を落胆した表情で歩いていると、ふと立ち止まって思いが過った。脳裏にはあの事が蘇った。あの時あの子が眠っている間に生命維持装置を切れば良かったと…――。
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