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克哉
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――その日、警察署内の受付窓口で若い青年の男性が大きな声をだして騒いでいた。彼は深刻な様子で焦っていた。
短髪の黒髪に白色のコートを着た眼鏡姿の男は突如、両手をバンと受付窓口のカウンターに手をつくとそこで大きな声を張り上げて訴えた。彼の慌てる様子とは裏腹に、年老いた警官は冷静だった。そして、呑気な口調でやんわりと対応した。
「まぁまぁ、宮下さん少しは落ち着いて下さい。きっと弟さんは『裕也』さんはそのうち自分から、家に帰って来ますし、そんなに騒ぐ事でもないのでは? えーっとそれに調べた所、素行についてとくに非行歴や補導歴もありませんしねぇ……」
「裕也じゃないです、『悠真』です! 何度同じことを言わせる気なんですか…――!? こんな事してないで早くうちの弟を探して下さいっ!!」
そう言ってカッとなって怒ると、警察署の中で青年は必死に訴えた。彼は悠真の兄『克哉』だった。彼は深刻な様子で顔面蒼白になりながら、必死で警察署の窓口で頼み込んだ。だが、そんな彼の焦りとは裏腹に警察官は今一、話には気乗りじゃなかった。
「えーっと、あーそうそう。克哉さんでしたっけ? で、弟さんを我々にどうしろと?」
ほとんど気乗りじゃない警察官が聞き返すと、克哉は警察署の窓口で強い苛立ちを見せた。
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