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―見返り―
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――目覚めた途端、視界に天井が飛び込んできた。もう何度も見た白い天井だ。いい加減見飽きた。俺は目を覚ますと泣いている事に気がついた。酷く嫌な夢だった。思い出すと体中が震える。
やっとの思いで帰れたと思ったのに何故か家には誰もいなかった。あれが『夢』でも俺には最悪な夢だった。ひょっとしたら俺は、とっくに両親に忘れ去られているようなそんな絶望感が増すばかりだった。
父さん……。母さん……。兄貴……。リン……。
会いたい…――。
不意に頭に家族の顔が浮かんだ。
今まで平凡に過ごした日常。
変わらない毎日、変わらない明日。
今まで自分の家族が恋しいだなんて一度も思ったこともないのに今は何故か恋しい。それが日が経つにつれて大きくなっている。
あの暖かい日常の風景に戻れたら、どんなに良いか。どうしてだろうか、家族団欒に過ごしたあの景色が酷く懐かしい。そう思った途端、再び涙が流れた。
「クソッ……!」
瞳から涙が溢れると不意に右手で涙を拭った。その時、俺は気がついた。右手を見ると手錠が外れていた。ついでに左手の手錠も外れていた。昨日はあいつの前でとてつもなく恥をかいた。思い出すだけでも、忌々しい記憶だ。消毒だとか言って俺はあいつの前で……!
「チッ、クソッタレ…――!」
幸い両手の手錠が外れていて繋がれたベッドから出ることができた。だが、相変わらず左足には足枷が嵌められていた。歩くと重くて鎖の鈍い音がする。まるで囚人のような気分だ。だから引き摺って部屋の中を歩いた。
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