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9話目
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カフェに入ると、ファオロ様は席に着くなり、「コーヒー2つ。レイイチはアイス?ホット?」と聞くので「じゃあ、ホットで。」と答えると、「なら、ホット2つで。」と店員へ頼むと「はい、ではお持ちしますね。」と店員は、にこやかに去って行った。
「えっと・・・、それで。」
「うん、俺ね。・・・・・・寒い中、会えるまで待ってられるくらいレイイチのこと好き。ちょっと声が聞けるだけで嬉しいって感じるし、独立したいっていうレイイチの夢も叶えてあげたいって、それも一緒に出来るなら、尚の事、嬉しい。・・・俺、本気で考えてるんだ。」
ファオロ様の真剣な顔と声を聞けば、嘘じゃないことぐらい分かる。・・・分かるからこそ、適当な答えは出せないんだ・・・。
咄嗟に返事が出来ず、黙り込んでいると、店員がタイミングよくコーヒーを2つ運んできた。「お待たせいたしました。」と声を掛け、コーヒーを置いて、また去って行った。
あたたかいコーヒーを一口飲むと、少し落ち着いたらしく、小さく息を吐いた。
「・・・俺も昨日のことを考えて、本当は今日休みなのに出勤してしまったり、1日中溜息ばっかり吐いて、・・・俺らしくない行動ばっかりでした。昨日の・・・ファオロ様からの行動も俺のこと、女か何かに勘違いしてるんじゃないか、とか思ってました。」
ペラペラと自分が思っていることを話すなんてことは、あまりないので、のどが渇くのを思った以上に感じる。また一口、コーヒーを飲んでは少し潤った気がした。
・・・真っ直ぐにファオロ様を見つめると、真っ赤になって少し震えていた。そんな彼を見ていると、何だか守ってあげたくなる。思わず、手を伸ばし、そっと彼の手を握ってあげると、下がっていた彼の顔がこちらを向いた。
「・・・でもね、今のあんたの真っ直ぐな言葉と、・・・真っ赤になってるあんた見てたら、昨日の事に嫌悪感を抱かなかったことも、今、可愛いって思ってるのも説明が付くって分かったよ。・・・俺、あんたが好きだよ。その綺麗な瞳だって、見た目と違って、あったかくて可愛いワンコみたいなところも全部。・・・まぁ、暴走するのは止めて欲しいし、寒い中、待ってられたら、心配で仕事に手が付かなくなるから止めてほしいけどね。」
「レイイチ・・・。」
「だから、俺の傍に居てくれる?ファオロ。」
満面のという笑みではなかったけれど、ファオロへ笑顔を見せると、ファオロはコクコクと何度も頷いて、涙を浮かべてこちらを見てくれた。
零れそうな涙を拭ってあげたかったけど、テーブルが邪魔して届かないな、とハンカチを渡そうと、上着のポケットを漁っていると、『ガタガタ』と音を立てて、ファオロが立ち上がった。
すると、一口も飲んでいないコーヒーと、俺の何口か飲んだコーヒーを残してテーブルから離れ、ファオロは会計をバタバタと慌てて終わらせては、俺の手を引いてカフェを後にした。
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