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11話目
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「・・・それで、電話するのを忘れたってことっすね。」
久山さんは呆れた様に俺たちを見つつ、はぁ、と大きな溜息を吐いた。・・・彼の去り際の言葉を忘れていた訳ではないが、それよりお互いの事でいっぱいいっぱいだった俺たちは、彼に連絡することなく、次の日を迎えていた。
「なーんか、きちんと納まったみたいっすね。」
久山さんはニコニコと起きた時からご機嫌そうなファオロの笑顔に、更にげんなりとした様子でそう声を掛けた。
「・・・昨日はすまなかった。ヒサヤマ、とりあえず今日は物件、見に行くぞ?・・・レイイチは仕事、だよね?」
自分で口にしながら、シュンとしょげつつ、こちらを見つめるファオロに対して、苦笑を零してみせると、ポンッと頭を一撫でしてやる。それに、久山さんは少し冗談っぽい口調で、「ファーさん、あんまりワガママ言ってると、旭さんから嫌われちゃうっすよー。」と言ってのける。
それを聞いたファオロは若干、涙目で嫌わないよね?といった感じこちらを見遣る。・・・久山さん、助けてくれてるつもりかもですけど、逆効果ですから、と内心呟きながら、大丈夫の意味を込めて、小さく笑みを向ける。
「出勤までちょっとあるけど、準備もあるし、家に一回帰らねェと・・・。それと、今回は俺の代わりに見に行くだけだからな?独立するなら、自分で色々とこだわりたいしな。」
きちんと俺の気持ちを伝えつつ、「でも、独立を手伝ってくれてありがとうな?」とさりげない一言を添えると、ファオロは嬉しそうに笑顔を見せて、大きく頷いて見せた。
「ファーさんの操り方、上手いっすね、旭さん!」
久山さんはすごくいい笑顔でそう言ってのけた。・・・この人、微妙に空気読めてないな、と思わず苦笑が零れた。久山さんへは特に言葉を返さず、ファオロへ視線をやると、少し首を傾げて、なに?といったカンジで見ている。
昨日の事もあり、大型犬が尻尾を振っていて可愛い、と思う上に恋人という欲目もプラスされて更に愛おしくも感じる。・・・ダメだな、離れたくない、と内心思っていると、言葉よりも行動が先を行ってしまった。
腰に手を回して、そっとこちらへ抱き寄せると、前髪を上げ、額に口付けを落とした。
「今日の夜、バーに来てくれるか?」
笑みを口元に浮かべつつ言うと、ファオロは真っ赤になってコクコクと何度も頷いていた。今日会えるなら、仕事頑張ろうかな、と更に笑みを深めると、ファオロは顔を隠す様に胸に顔を埋めた。
・・・可愛いな、と耳まで真っ赤になっている彼の耳をなぞる様に触れていると、「俺のこと、忘れてますよね・・・。」と久山さんの声がかかって、慌ててファオロを離した。
これ以上話込んでいると、また離したくなくなる、と思い、「じゃあ、ファオロ、また後で。それから、久山さん、昨日はすみませんでした。」と言葉を掛けて、背を向けた。
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