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15話目
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俺はコーヒーを、ファオロには希望のハチミツ入りのホットミルクを淹れて、リビングのソファに腰を下ろした。
そういえば、と思い、隣に座ったファオロへ視線を向ける。
「今日、見に行ったんだろ?・・・どうだった?」
先程のバーでの様子、・・・今日の事を聞くと、明らかに表情が曇ったのを思い出して、とりあえず、同じ質問をしてみることにした。
「・・・すごく良かった。場所も店内も、外は綺麗にしないと、だけどね。」
ホットミルクをチビチビと飲みながら、こちらを見ることなく話す彼に、やはりおかしいと感じつつ、同じくコーヒーを飲むと、外で冷やされた体温が少し戻ってきた。
・・・追求すべきか、否か、少し考え込んでいると、ファオロが顔を覗き込む様に窺っている。
「・・・レイイチ、どうかしたか?」
心配げに見つめる彼に小さく笑ってみせ、『ただ単に疲れたかもしれないし、俺の思い込みかも』と考える俺の意見を強く否定する、別の俺がいる。・・・聞いてみるべきか、と前者であったとしても、この質問は問題ないだろう、と素早く結論を出した。
「ファオロは?さっき浮かない顔してたけど、何かあったのか?」
カップを目の前のテーブルに置き、サラリと髪を撫でると、ファオロは気持ち良さそうに目をつぶり、「大丈夫、少し疲れただけ。」と小さく笑ってみせた。
大丈夫そうにも見えるが、そうじゃない様にも見えるな・・・とじっと見つめると、目をそらす彼に手を伸ばし、ギュッと強く抱き締めた。
「何かあったら、言えよ?」
抱き締めたまま、俺の心配が伝わってしまわないか、とも思ったが、つい力が入ってしまう。
「・・・レイイチ。」
駄目だな、と自分が情けないと感じながら、少ししがみ付く様に抱き締め、首元に顔を埋めた。
俺のことを心配してくれるファオロは好きだ、でも、俺のことを優先させて、自分のことを後回しにさせてしまうのは、恋人として情けなく思うわけで・・・。それをうまく、彼が傷付かない様に伝えられたらと考えつつ、言葉が思い浮かばない自分に「はぁ。」と溜息が零れた。
接客の時は相談や愚痴を聞いたりする際にきちんと話が出来て、上手くできるのに・・・、俺って恋人に対してヘタレ?・・・いや、今までそんなことはなかったのに、と更に情けない気持ちが膨らみ、気分が落ちて行った。
「レイイチ、くすぐったいよ。」
考え事をする内に、グリグリと頭を押し付けていたらしく、ファオロはクスクスと笑みを零しては言ってのけた。そして、少し声のトーンを落として続けた。
「ちょっと不安になって・・・レイイチの一番、僕かな?」
「・・・もちろん!俺が一番好きなのはファオロだ。」
何を今更とも思ったが、あまりにも真剣なファオロの表情に、少しでもその不安が取り除ければ、と強く抱き締めなおし、そっと耳元で甘く囁きかけた。
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