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「…き?雪?」
「え?」
気が付くと、蘭の顔が目の前にあってびっくりした。
「"え?"じゃないよ!何回呼んだと思ってるの!」
ぷんぷんと怒る蘭。
昨日の始業式から一日が経って、今日からまた学校生活が始まる。
「ごめんごめん、考え事してたー。」
へらりと笑う俺、蘭の顔にスッと陰。
「…何考えてたの?」
「この学校に、来た頃のこと。」
逃げて、来た頃のこと。
「…あぁ、勘違い雪ちゃんが、僕に威嚇したときのことね?」
「!」
可愛い顔して、いつまでもその話を引きずる蘭。
「"ここは俺の部屋だ!"だっけ?
僕の部屋でもあるんですけどー。」
「ごめんってば!」
もう、何回謝ったことか…。
あの時の俺は、精神的にも参っていて、
一人部屋だと思っていた場所に突然人が入って来て、
俺は混乱してしまったのだ。
「ねぇ、雪。」
「ん?」
先ほどまでの緩い雰囲気はどこに行ったのか、蘭は俺をまっすぐ見詰めてくる。
「ここは、僕たち二人の部屋だよね…?」
言っている意味が、よくわからない。
「当たり前でしょ、」そう返すと蘭は、
「うん、そうだよね」と苦笑した。
そして、
「つまり、ね。雪は、一人じゃないってこと。」
一年前、翔兄が言ったのと同じ言葉で、俺を元気づけた。
今日から俺は、今まで以上に上手い演技をして生活しなければならない。
今までの学園生活だって、"僕"が笑って過ごしていたけれど、更に演技を重ねて生きなければならない。
さようならは言わない。
元々なかったことにするのだから。
再会なんて、もっといらない。
俺はもうこれ以上傷付きたくないのだから。
「"園田君"と、仲良くなれるといいなあ。」
"僕"が、そう言うと、
「そうだねぇ、一緒に生徒会の仕事、頑張れるといいねぇ。」
と蘭が笑った。
罪悪感は無くなった。
これは、"新しい自分"だから。
嘘をついているわけじゃない。
"変わった"んだ。俺は、あの時変わったんだよ。
==第二章 終==
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