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「…雪、君がこの学校に来たのはいつ?」
「高校入学と同時です。」
「その前は?」
「県外の、学校に。」
…同じ中学に、いた。
「それはどこ?」
「大きな駅の、側にあって、」
…本当は、家から少し離れた、丘の上。
「…学校名は?」
…それは、言えない。
「さっ、さっきからものすごい質問攻めですよねっ」
一体何が知りたいんですかっ?と"僕"がおろおろと彼を見上げると、
明らかに不機嫌な顔になった園田彰は、チッと小さく舌打ちをする。
「ご、ごめんなさい…、」
急に色々なことを聞かれたから…、と目を伏せると、
「いや、こちらこそごめんね?」
彼は"生徒会長"の顔に戻る。
「…君は、大きな事故だとか、経験したことはある?」
「事故…、ですか?ないですけど…。」
「例えば何か大切なことさえ忘れてしまうくらいの、大きな事故は、」
あぁ。そういうこと。
「ないですねえ、僕は大きな事故も病気もなく育った子だって散々言われているので。親に。」
大きな過ちは、犯したかもしれないけれど、ね。
「どうして急にそんなことを?」
「…。」
「会長…?」
急に黙り込んでしまった彼を不審に思い、声をかける。
静寂した部屋の中で、僕の声は響くことなくぽつりと落ちた。
「…………んで。」
「…え?」
「名前で呼んで。俺のこと。」
"今までみたいに。"、
最後に付け足された言葉は聞こえないふり。
そんな俺に、一歩ずつ近付いてくる彼。
「名前…、」
「そう。俺の名前は"会長"じゃあないよ?」
彼と俺との距離は、数歩分。
「そ、その、だ君、」
「彰。」
「…、」
「あきら、って呼んで。」
とうとう、園田彰が目の前に来た。
「え、」
困惑する俺を見つめて、園田彰は手を伸ばす。
さわり、と髪を撫でてきた。
あぁ、これは、彼の癖。
忘れようとしても、心に刻まれていて。
でも。
「ごめんなさい、僕、」
忘れたい。
「親しくなってからじゃないと、名前で呼んだりするの、苦手で…」
照れてしまうというか、なんというか…。
と続けたあと、
「でも、園田君がそう言ってくれるのはとても嬉しいですよ?」
首を傾げ、媚びるような目で、園田彰の手の上に、自分の手を重ねた。
ビクリ、彼が少し震えて、
"僕"たちはまた、遠くなった。
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