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今回も例に漏れず副会長より早く仕事が終わってしまい、
僕は生徒会室にある小さなキッチンに向かった。
お茶菓子やら何やらを用意しながらふぅ、とため息をつく。
綺麗な白いキッチンは僕のお気に入りの場所で、
落ち着ける数少ない場所の一つでもある。
夢中になっているときには大丈夫でも、すぐに頭をいっぱいにするのはあいつのことで。
考えてはいけない、"僕"には関係ない、
そうは思っても思考は僕を無視して突き進んでしまう。
『雪…』
『会いたかった…』
『俺の、雪だよな?』
雪、
ゆき、
ゆ、き…
エンドレスであいつの声が頭を巡って、どうしようもない。
まるで呪縛だ。
"俺"を掴んで離さない。
『雪は、雪だろ?』
違うのに。"あいつの雪"は、もういないのに。
『雪、会いたかった、雪…俺の、雪、』
『雪、俺はお前のこ』「雪さん?」
ハッと顔をあげると、副会長が心配そうな顔で僕を覗き込んでいた。
「大丈夫ですか?」
そう言いながら、彼は僕の後頭部撫でるように手を動かす。
「…あ、はい、すみません…、ボーッとしちゃっただけで…」
「それならいいのですが…、」
「ごめんなさい、仕事中に…」
「そんなことはいいんですよ、
雪さんは、すぐに無理をするんだから…」
無理だなんて…。
そう返したものの、副会長がそれを聞き入れてくれるはずもなく、
「雪さんは部屋に戻って休んでください。」
そう言って優しく、けれども強引に廊下に出されそうになる。
「ふ、副会長っ、あのっ、」
本当にただ、ボーッとしていただけなのだ、
だから、こうやってまた彼の負担を増やすわけにはいかない。
「僕、副会長とっ、お茶したいんですけどっ」
ずずず、と背中を押されながらも振り返った僕に、
驚いたのか、彼は目を真ん丸にしている。
けれどそれも一瞬で、
「光栄です。」
そう言って、僕の手を引きソファに座らせた。
「今、お茶いれてきますね。」
有無を言わさずそう告げたあと、彼はキッチンの方へと向かい、
帰って来たときには白いトレイの上にティーカップとお菓子を乗せて、
「どうぞ。」と笑った。
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