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「今日はこれで解散。」
園田彰はあっさりそう言うと、自分の荷物や資料をまとめ始めた。
それに続くように他の役員も片づけを始めたけれど、その顔は、まだ納得していない色を残している。
そんな中僕は、ぐちゃぐちゃになりそうな思考と戦っていて、
僕を支えるのは、
1年前の自分、ただそれだけで。
『もう…っ、全部忘れたから…、』
あのとき翔兄に言った言葉は嘘じゃない。
嘘に"させない"って"決めた"んだ。
「雪さん…、大丈夫ですか?」
僕が自分の思考に溺れそうになっているのを助けてくれたのは、
心配そうな顔をした薫先輩だった。
最近、こんな顔をよく見る。
蘭や薫先輩に、こんな顔ばかりさせてる。
―結局、僕は1年前から何も変わってないのかもしれない。
周りを心配させるだけ心配させて、
その代わりに僕は、何を返せているのだろう。
僕のことを心配する翔兄や両親の顔までもが、ちらりと頭を過ぎった。
「いえ…、いきなり大役を任されてしまったものですから…、」
びっくりしすぎて放心してしまいました、と僕は困ったように笑った。
「そうやってまた貴方は笑って…」
「え?」
「いえ…、僕も精一杯サポートするので大丈夫ですよ、
何より、雪さんはデキるひとですから。」
薫先輩は僕の頭をぽんぽんと優しく撫でながら、元気づけてくれた。
「ふふ、なんだか薫先輩にそう言われると、」
ザザーーーッ
"大丈夫な気がしてきますね"と続けようとした言葉が、書類の不快な音で遮られた。
その音がした方に目を向けるとそこには、
手に持っていたであろう書類の束を落とした園田彰が、
僕らの方をじっと見ている姿が目に映った。
シン、と生徒会室が静寂に包まれる。
しかしそれも数秒のこと、
園田彰は慌てて、ばらまいてしまったプリントたちを拾い集めるために膝をついた。
「…。」
しかし、その他の役員たちは誰も動こうとはしない。
不自然な静寂が、生徒会室を支配していて、
そこには、
新しい生徒会長の強引さへの不信感がありありと見てとれた。
そんな中僕は、ただじっと園田彰を見ていたのだった。
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