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「では、僕たちも解散にしましょうか。」
話に区切りがついたところで、薫先輩がそう言った。
「そうですね、とりあえず。」
僕以外の役員は大体片づけが終わっていたので立ち上がって、
「お疲れ様でした。」と生徒会室を出て行く。
そこに残ったのは蘭と薫先輩と僕の3人。
蘭は「ほら、雪、支度遅いよっ」と笑った。
いつもとはまた違った種類の明るい声を聞いて、なんだかむしょうに泣きたくなった。
蘭は机に広がった書類の整理を手伝ってくれて、一瞬で帰れる状態となる。
…心はまだ、ぐちゃぐちゃなままだけれど。
「副会長はこの後どうします?」
未だに席を立たない薫先輩に、蘭が声をかけた。
「僕は少し、やりたい仕事が残っているので、」
「そうですか…、じゃ、戸締まりよろしくお願いしますね?よし、雪、帰ろっ」
「…あ、…薫先輩の手伝い、してこうかな…」
シン、と一瞬だけ静かになったのがわかった。
「…お気持ちはうれしいですが、
雪さんお疲れのようですし、
今日はお部屋で休んでください。ね?」
彼は優しい声でそう言った。
その優しさが、なぜだかひどく悲しかった。
僕は、矛盾している。
薫先輩の、見透かすような瞳は避けたいくせに、
彼ならわかってくれるんじゃないか、
その上で、何もかも許してくれるんじゃないか、
そういった狡い甘えが、僕を蝕むのだ。
僕は疲れていた。
誰にも打ち明けられない"白紙にした過去"が、
あまりにも強く、僕をくじこうとする。
縋りたい、
でもそれはこの、1年を無駄にする。
もう、後悔したくない。
過去をなかったことにする矛盾した努力なんて、
もう二度としたくない。
「…わかりました、今日は帰ります。
薫先輩も、あまり無理しないでくださいね?」
「えぇ。さっさと終わらせて、雪さんの負担を少しでも軽くしてみせます。」
「………園田会長の専属ですよ、雪は。」
ポツリと落とされた蘭の言葉がひどく冷たく聞こえたのも、
どうか気のせいであってほしい。
第四章 終
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