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僕は書類を片付け始める。
「ちょっと待って、」
「なんです?」
彼の方をちらりとも見ずに返事をするけど、
なんとなく園田彰がどんな顔をしているかわかってしまう。
でも、限界だ。
何かがまとわりつくようなダルさに負けてしまいそう。
身体が重い。
「雪、」
「すみません、今日はこれで失礼します。」
僕は視線を振り切って、会長の隣から離れる。
「お疲れ様です。」
バタン、と重厚な扉を閉めて、重い身体を引きずるようにして歩いた。
駄目だ、体調が悪いと、思考までどっぷりマイナスに浸かる。
『幸せなの』か?
馬鹿じゃないの、そんなこと聞くなんて、
頭でもおかしくなったの?
その、唯一の幸せをくれなかったのは誰。
「苦しい…」
ぽつりと呟いてしまった。負けた気分だ。
でも少し楽になった気がする。
どれだけ飽和状態だったのだろう、僕の心は。
でも、会長にあんな口のききかたをしてしまったのはよくなかった。
明日、一応謝ろう。
具合が悪くて余裕がなかった、
言い訳はそんなものでいいだろう。
エレベーターホールに着いた。
僕らの部屋は、生徒会室からすぐだ。
早く寝てしまいたい。
なのに、
「雪…!」
それさえもこの人は許してくれない。
振り返ると、僕は一瞬でその腕に抱き込まれてしまった。
「ごめんな、雪、ごめん…」
一体何に対しての『ごめん』なんだろう、
園田彰は何度も繰り返し『ごめん』を言うけど、
その意味がわからなければ何も返すことができない。
「…。」
「ゆき、ごめん…、」
お願い、やめて。
これ以上は、やめて。
震える肩が、僕を揺らす。
縋るように回された腕が、僕を揺らす。
嗚咽のまじる声が、僕を揺らす。
彼の全てに、いちいち揺れてしまうんだ。
心に引きずられるように、体までぐらぐらし始めた。
気持ちが悪い。どうしようもない。
「ゆき、ごめんな、俺はお前を…---」
彼の言葉に耳を塞ぐように、
すぅ、と自分の意識が遠退いていくのがわかった。
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