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11 (彰)
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ポン、とエレベーターが到着したことを知らせる音が静かなホールに響いて、ドアがゆっくり開いていく。
「…、」
「あ、会長、お疲れ様です。」
「……あぁ、お疲れ。」
エレベーターから出て来たのは、副会長の咲月薫だった。
「雪さん、生徒会室にいらっしゃいますか?」
「っ、」
吐き気がする。
他の誰かからあいつの名前を聞くだけで、狂いそうになる。
俺は無視するように副会長の横を通り過ぎ、
エレベーターの中に入った。
ドアがまた、ゆっくりと閉じていく。
「貴方も雪さんも、何に怯えているんですかね。」
呟かれた冷たい言葉の真意を尋ねるタイミングを逃し、
エレベーターは静かに俺を乗せて下りていった。
あいつは何か知っているのだろうか。
あの見透かすような目が、なんだか恐ろしい。
俺はあの冷めた視線を思い出しながらも、それを振り切るようにして保健室へと向かった。
勿論その目的は保健医を呼ぶことだったのだが、
廊下でばったりと出くわす。
「真中雪さんのところへなら、今から行きますよ。」
俺に気付いた保健医が声をかけてきた。
「理事長から連絡があったので。」
「そうか…、頼む。」
「はい。急ぎましょう。」
「…いや、俺はいいよ。」
どうせ生徒会室には咲月薫がいる。
それに、今の状態であれ以上雪の側にいることは無理。
壊れてしまいたくなる。
狂ってしまいたくなる。
だからわざわざ、直接保健医を呼びに来たのだ。
「でも…、」
「いいんだ。それじゃあ。」
自室に戻るために、特別棟に向かう。
保険医からの視線には、気づかないふり。
「雪…、」
大丈夫、なのだろうか。
元々あいつは体力がある方ではないし、
何よりあの血の気のない顔を思い出すとこっちまで苦しくなってくる。
きっと、俺は繰り返している。
目に見えるか見えないかという違いだけで、
雪を追い詰めているのに変わりはない。
そんな雪を見ていて喜んでいたのだ、過去の自分は。
なんて、愚か。
なんて、浅はか。
今頃、保健医は生徒会室に着いているだろうか。
…咲月薫は、雪の側に。
『薫先輩。』
雪の綺麗な声が、アイツの名前を紡ぐ姿が頭を支配する。
『園田君。』
『僕、名前で呼んだりするの苦手で…。』
この1年で、大きく変わってしまった。
1年の付き合いが、俺達の17年にのし上がろうとしている。
だけど変わらないのは、俺の気持ち。
変わってしまったのは、
俺達の距離。
「自業自得、だ。」
わかってる。
だからこそ、
こんなにも痛い。
==彰side 終======
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