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「副会長への返事、どうすんの!?」
「ゔー、どうしよう…」
「…ま、ゆっくり考えなよ?焦る問題でもないし。」
「そ、だね。うん」
「それより、理事長に連絡取るのが先かもよ…?」
そうだよな、翔兄にこれまでのこと、聞かなきゃ。
「…ん。時間取ってもらう。」
「うん、いい子。」
蘭は俺の頭をぽんぽんと撫でた。
「なんか…」
「ん?」
「気丈な猫さん手なずけた気分。」
「…!」
「痛ーっ!猫パンチしないでよばかー!」
「猫パ…!?俺は猫じゃない!」
「あー、またツンツンな野良に戻ったー」
「らーんー!」
「きゃー、って、ちょ、くすぐったいってばっ」
「このー!」
「きゃははは、ぎぶ!ぎぶぎぶー!」
涙はまだ乾いてなかったけど、心から笑えてるのがわかった。
ありがとう、蘭。
蘭は俺の、尊敬する親友です。
決意が揺らぐ前に、翔兄に連絡を取ってしまうことにした。
隣に座っている蘭は、俺の手をぎゅっと握って頷く。
アドレス帳から翔兄の番号を呼び出して、通話ボタン。
たったそれだけの動作に、ものすごく緊張しているのが分かった。
RRRR…
静かに響く電子音が俺を緊張させる。
RRRR…プツッ
『…はい。』
「えっ…と?」
『お久しぶりです、雪様。』
「あ、秘書さん!?」
びっくりした。
出た人の声が翔兄のじゃなかったから、間違えたかと。
「え、でもあれ…?
これ、プライベートの携帯ですよね…?」
仕事用の方に秘書さんが出るなら分かるけど…
ドクン、と厭な予感が強くなる。
もしかして、本当に避けられてる…?
『翔様は今少しバタバタしていまして…、
何か言づてがあるならお伝えいたしますが?』
「や、あの…ゆっくり話す時間が、欲しくて…」
『そうですか。
一ヶ月後、そちらで時間が取れるのですがいかがでしょう?』
「え!?か、勝手に決めちゃって大丈夫なんですか!?」
『私を誰だと思いで?』
そうでした、彼は翔兄でさえ頭の上がらない秘書様様でした…。
「じゃあ、一ヶ月後に…」
『詳しい日時は追ってご連絡いたしますね。』
そうして、思ったよりあっさりと通話は終わった。
『ゆ、雪との電話終わったか…!?』
『…はあ。なんですかそのヘタレっぷりは。』
『仕方ないだろう…!心の準備が…!!』
『電話一本で心の準備も何も…。
園田家の将来が心配ですよ、私は。』
『だって雪からの電話だぞ!?
どうするんだ、"翔兄なんて嫌いだ"とか言われたら…!
俺はこの後の会議に出られる自信がない!』
『兄弟揃って、雪様に弱いんですねえ。』
電話が終わったあと、
秘書さんと翔兄との間でそんな会話がなされていたことなど、
俺は知るはずもなかった。
「理事長、なんて?」
「秘書さんが出たんだけど、
来月。時間取ってくれるって。」
「そか…。
よし、じゃあ今日はもう寝よ!」
バッと蘭は立ち上がって、俺の腕を引っ張る。
「あ、俺その前にお風呂。」
「僕もだ!…一緒に入る?」
「えっ!?」
「よーし!僕お風呂沸かしてくる!」
断る隙なんて一切与えず、「雪は着替え用意して待ってて!」なんて浴室向かって行ってしまった。
ま、蘭が楽しそうだからいいや。
最近、ずっと蘭と喋れてなかったから、俺も嬉しい。
今までも仲良しだったけど、もっともっと近付いた存在になれるんじゃないかって、
想像したらうれしくなって一人こっそり笑ってしまった。
脱衣所からは鼻歌を歌う蘭の声が聞こえていて、
蘭も俺と同じことを考えてくれたらいいななんて思った。
二人で入っても浴室はまだ余るくらい広くて、
蘭がどんなにはしゃいでいても狭いと感じることはなかった。
だけど、
恥ずかしいからと腰に巻いてたタオルを奪い取られたあげく、
「お背中流しますよー!」と強引に座らされ、ものすごくパワフルに背中を洗われた。
もう二度と一緒になんか入るものか!、と俺は誓ったのだった。
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