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赦せないだとか、そういうんじゃなかったのに。
耐えられなくて逃げ出した卑怯者は、俺なのに。
RRRRR・・・
「っ、電話・・・」
泣きながら寮の廊下を歩いていると、電子音が鳴った。
「もしも」
『雪!?泣いてるのか!?』
「……ごめん翔兄、"もしもし"くらい最後まで言わせてくれる?」
『わ、悪い…』
電話をかけてきたのは翔兄。
久しぶりに聞いたその声に安心する俺だけど、
"もしも"のたった3文字で俺が泣いていることに気付いた彼にちょっと呆れる。
うれしい、ってのももちろんあるけど。
『何かあったのか…?』
「"何か"、って例えば?」
心当たりでもあるの?と続けたら、翔兄は黙ってしまう。
『…』
「ごめん、いじわる言った」
何やってんだろ、俺。翔兄は何にも悪くないと言うのに。
これじゃあただのやつあたりだ。
「俺さ、」
『あぁ、』
「間違っていたのかもしれない」
『…』
「いや、間違っていることは最初から分かってたんだ、本当は」
そう。最初からちゃんと分かってた。
「でも、こんなに酷いことをしている自覚なんて、なかったんだ…」
『雪、お前は、
お前は悪くない、だってそれには理由が』
「どんな理由があったとしても。
言い訳にしかならないんだよ、きっと。」
『雪…
ああもう!、分かってる、すぐ終わる!』
「翔兄?」
『悪い雪、秘書がうるさ…じゃなかった、
秘書が呼んでるんだ』
「あ、ごめん、忙しいんだよね?」
『いや、こちらからかけたのに悪いな』
「ううん、翔兄の声聞けて元気出た。」
『雪…!
一週間!一週間後、会えないか…?』
「一週間後…?あれ、秘書さんとした約束より随分早いけど…」
『生徒総会より前に会いたいんだ、早めてもいいか?』
「俺は構わないけど…」
『よし、じゃあ一週間後の放課後に、理事長室で。』
「わかった。」
『それじゃあまたな。』
「うん、またね、」
『、だからまだ5分経ってな―ブチッ』
そこで電話は切れた。
「…。」
秘書さんから"電話は5分"とでも言われていたのだろうか。
あれ、てことはかなり忙しいんじゃ…。
「大丈夫かな、一週間後とか言ってたけど…」
翔兄には会いたいけど、無理させるのは申し訳ない。
そう思いながらも、頬が緩んでしまうのは止められなかった。
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