アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
11
-
「悪かった…!」
ええと。
この状況は一体なんだろう…?
翔兄との約束の日、俺は緊張して理事長室のドアをノックした。
トントン
「翔に…、理事長。1年の真中雪です。」
俺は今、理事長室の前に立っている。
一週間前に約束したとおり、翔兄に会うためだ。
「どうぞ」という返事があったので、震える右手を叱咤してドアを開けた。
「失礼しま…うわっ」
「雪…!」
「び、びっくりしたー…!
ドアの真ん前にいないでよカケ…理事長!」
「慣れないことしなくていいぞ?雪」
俺は理事長としてお前を呼んだわけじゃないんだからな、と言いながら、ぎゅうぎゅう抱きしめてくる翔兄。
「う…。…久しぶり。翔兄。」
「あぁ、久しぶりだな、雪。」
翔兄は、ちょっと困った顔で笑った。
部屋に入るとすぐ、俺をソファに座らせて、翔兄は言った。
「雪に謝らなくてはいけないことがあるよな」
そして冒頭にもどる、と。
「か、翔兄…?頭あげてお願いだから…」
「いや、俺は雪との約束を破ったんだ、
これくらい当たり前だ。」
「それってもしかしなくても…
あいつのことだよね…?」
「…あぁ。」
翔兄は向かい側のソファで頭を下げたまま動かない。
「そのことなら…もういいよ?」
「だがっ、」
「ありがとうね、翔兄。」
「…、」
翔兄は黙ってしまったけど、俺は構わず続けた。
「俺、ひどいこと翔兄に頼んだよね。
あの時の俺は、自分のことしか考えてなかったんだ。」
自分のすることが、したことが、どれだけ周りのひとたちに影響を与えるのか、
ちゃんと分かっていなかった。
翔兄に頼んだのは、翔兄が弟を裏切ることになりえる行為。
「謝らないで、翔兄。
俺、もう逃げないって決めたから。」
「雪…
お前、会わないうちにまた強くなって…」
「あはは、3ヶ月とか4ヶ月とかでそんなに変わるわけないよ。」
「いや、お前は変わったよ。」
「うーん、そしたらそれは、みんなのおかげかな。」
みんながいなかったらきっと、俺は逃げたままだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
94 / 223