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「そうか、いい出会いに恵まれたな、雪。」
「翔兄のおかげが大部分だけどね?」
蘭なんかは特に、引き合わせたのは同室にしてくれた翔兄だ。
「中身が素敵なひとは、中身が素敵なひとに惹かれるもんなんだよ。」
「翔兄…ありがと。だいすき。」
「…、その言葉を聞いてからだと言いづらくて仕方ないんだが…」
「?なに?」
「もう一つ、謝りたいことがあるんだ。」
「へ?」
「これ。」
「!」
翔兄がテーブルの上に置いたのは、カギ、だった。
「なんで、これ…」
「…」
見覚えがあるぬいぐるみがついている。
これは昔、あいつがくれた小さなぬいぐるみ。
そうだ、俺が、中学のときに住んでいた2人の部屋のカギにつけたんだ。
大事な大事な、あいつとの部屋のカギにつけるのはこの大事な大事なぬいぐるみしかないって、
キーホルダーにしたんだ。2年前のことだけどよく覚えてる。
だからつまり、これは…
「あの部屋のカギだ。」
「な、んで…だってあの部屋はもう、」
「実はまだ、あのままなんだよ。」
「…!」
「解約したって、嘘ついてごめんな。」
「どうして…?どうしてそんなこと…」
ないと思っていた部屋。
過去に置いてきた、思い出ばかりの部屋。
それが、まだある…?
「あいつが、どうしてもって、」
「、」
「"雪との場所まで失ったら俺は…
多分生きていけない"…
そう言ってあいつはあの部屋から動かなかった。」
もしかしたら雪が帰って来るかもしれないと居座ったんだ、と翔兄は続けた。
俺は何と言っていいのか分からずに、ただずっと部屋のカギを眺めていた。
懐かしい、という言葉だけじゃ表せないぐちゃぐちゃとした感情と戦いながら。
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