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「好きな奴……いるの?」
ドキンッ
瀬戸君が予想外な事言い出すから、僕の心臓は普段より大きな音で鳴ってしまった。
瀬戸君に、聞こえてなきゃいいけど……。
「え、あの……」
好きな子なんていないんだけど、こうも唐突に言われると上手く言葉が口から出ない……。
「あっ……ごめん、俺……いきなり何、聞いてんだか……」
きっと瀬戸君は、沈黙のままだから責任感じちゃって、話題を振っただけなのに……。
どうしよう……。
僕が喋らないと、また気を遣わせちゃうよね……。
「いっ……いないよ……」
「んっ?」
勇気を出してやっと言葉に出来たのに、声が小さかったみたい。
瀬戸君がもう一度言って欲しいみたいに、聞き返してきてる。
「……いない、よ。だって……こんな全然喋らない僕が……人を好きになったって……叶わないもん」
あ……いないって言うだけだったのに、余計な事まで言っちゃった。
瀬戸君、こんな事言われても困るよね。訂正しないと……。
「そんな事ないぞ? 戸波にだって、努力すれば、チャンスはあるよ」
僕が訂正を入れる前に、瀬戸君はそう言って、僕の頭を撫でてくれた。
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