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言えるまでの勇気
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「おはよ。戸波」
教室のドアを開けた瞬間、笑顔で僕を迎えながら、瀬戸君が挨拶をしてくれた。
「お、おはよ……瀬戸君……」
それに僕も、たどたどしく返す。
「今日も早いのな?」
「うん。いつもこの時間、だから……」
いつもって、凄いなと言う瀬戸君の言葉を聞き、少し照れながら僕は頷いた。
そう……僕はいつも、人より早く学校へ来ていた。
あまり人と話すのが得意な方じゃない僕は、朝の誰も来ていない教室に入って、シーンとした空間でゆっくりと過ごすのが、気に入っちゃったから。
だけど、今まで一番乗りの記録は、僕一人で伸ばし続けていたのに……二週間前からは、あっさりと途切れてしまった。
それは……毎日僕よりも早く、瀬戸君が教室に来ているから。
瀬戸君は、僕のクラスメイトで背が高く、女の子に凄くモテて――誰とでも気さくに話せる人気者だ。
そんな彼に比べて、地味な僕はと言えば……眼鏡をかけてて、いつも休み時間になると分厚い本を一人で読んでる。
おまけに、人と話すのが苦手だから、直ぐ言葉に詰まっちゃうし、元から暗い印象を持たれがちなので、女の子からは倦厭されそうなタイプの代表といってもいい。
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