アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3.
-
6限目まであった授業も全て終わり、放課後がやって来る。今の俺にとって唯一、学校が楽しいと思える時間だ。
それは…。
「薺ー!いくぞ!」
「いつでもいいぞー!」
ネットを挟んでサーブレシーブの練習をする競技。所謂テニスだ。俺も咲夜も中学の時からテニスをしているから、高校の部活もテニス部に入ろうと決めていた。
この時だけが唯一、楽しいと思える時間。部活の仲間も俺の外見のことを気にせず接してくれる。誰かに妬みを含んだ視線を向けられることも、男に性的な目で見られることもない。
そんな空間がとても落ち着くのだ。
「今日はここまでにする。明日の練習も参加するように」
部長が最後に挨拶をしていつも通り解散となる予定だったが、その後に「それと一つ、皆に知らせがある」と言うから、何だろう…と周りが騒めき出す。
「そんな騒めくことじゃないから話を聞け!2週間後のゴールデンウィークから臨時でコーチが付くことになった」
「コーチって…」
「ここのOBでインターハイに出場したことがある人らしい」
インターハイって…俺達高校生にとったら夢の舞台だ。俺が入学してからは誰も行ったことがないほど、簡単に行けるモノではない。
「コーチって幾つぐらいの人なんですか?」
「先生によれば大学3年生らしい。丁度俺ら3年生が入学する前の年にあっちは卒業しただから全く知らないな」
「男?女?」
「お前は何を求めてんだよ…男だよ。しかも、爽やかイケメンだとよ」
俺達と同学年の奴が部長に色々と質問する。大学3年生ってことは俺と4つ違いか…正直やだな…。
初対面の人は必ずと言っていいほど、俺を見て頬を赤く染めたり「女?」って聞いてくるから。今のクラスも、そして部活も初めはそうだった。
だから、きっとその人も悪意なく何かしら言ってくるだろう…仕方がないことでも、それを毎回ストレスに感じ取ってしまう。
連絡事項が終えて皆で片付けに入る。隣にいた咲夜が心配そうな表情で俺を見てきた。
「薺、大丈夫か?」
「何が?コーチ来るの楽しみだな」
「…あぁ、そうだな」
何に対して咲夜が心配してるか分かってるくせに、何も聞かれないように会話をする俺はズルい奴だ。心配してる友人の好意を素直に受け取れない…愚かで最低な自分が心底嫌いだ。
憂鬱になりながら咲夜と一緒に帰路に着く。
でも、そんな杞憂は不発に終わる。2週間後の"彼"との出逢いが俺の人生を大きく変えることになるなんて、思いもしなかった。
幸せになる資格なんてない…そう思っていた俺に愛される幸せを与えてくれる人に出逢うまで、後、2週間…。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
4 / 233