アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
9.
-
ゴールデンウィーク初日。今日から紫波さんがコーチとして俺達を指導してくれる。
あの日から俺の頭は紫波さんで一杯だ。
あ、語弊があるか…紫波さんがどんな指導をしてどんなプレイをするのか…。
インターハイを出場した実力を間近で見れるのはいい経験だ。
「…薺」
「咲夜、おはよう」
「おはよう、今日からだな」
「うん!楽しみだな〜」
学校に向かう途中に咲夜に会ってそのまま一緒に学校に行く。話題は勿論紫波さんのこと。
「やけに嬉しそうだな」
「だってインターハイに出場した人だぞ!そんな人に教えて貰えるなんて感激ものだし!」
「本当に薺はテニスが好きだな」
「うん…俺にはこれしかないから」
「……」
「あ、ごめんっ」
「いや…きっと他にやりたいこととか見つかるからさ、気楽に行こうぜ」
「…そうだな、俺らまだ高校生だし」
本当はそう言う意味で言ったわけじゃない。俺が心休まる時は部活しかないってこと。学校は息詰まるし家は…兄弟のことは好きだけど、あそこは俺の居場所じゃないから。
かと言っても、部活が居場所かと言われるとそうでもない。
咲夜とは中学からの繋がりと言っても俺の全てを知ってるわけじゃない。それこそ、家庭の事情なんてものは…。
あのことは俺達家族しか知らないから。
何処となくぎこちない空気が続いたが、学校に着いて部室に向かうと仲間がいたからか、俺達の間にあったぎこちない空気は薄れて行く。
「おはよう」
「お、片桐と白崎、はよ」
「まだ全員いないな」
「あーここにはいないけど、コートの方にいるぞ」
「皆自主練でもしてるの?」
そう言えば、ここに来る前に誰かが練習してたな…遠くて誰かは分からなかったけど。
それに、今もボールを打ち合う音がしている。
「自主練っつうより、相手をしてるんだよ」
「相手?」
「そっ、コーチのな」
「え、紫波さんもう来てるの?」
まだ部活が始まる20分前なのに既に来てることに驚いた。早く来て自分も練習する…言葉だけのコーチより断然いい。
その話を聞いて俺達も見に行ってみようとなりもう一度部室を出た。
外に出ると中にいた時よりもボールを打ち合う音が響いている。
「…なぁ薺」
「ん、何?」
「お前ってコーチのこと名前で呼んでんの?」
「紫波さんがコーチって呼ばなくていいって言ってたから」
「なに、もう話したの?」
「紫波さんが初めて来た日の部活の後、終わってから少しな」
正確に言えばその前にもう顔は知ってたけどな。でも、別に言うことじゃないから敢えては言わないけど…。
そんな話をしながらテニスコートに着くと言われた通り、数人と紫波さんが練習をしていた。
打ち合っている姿はとてもカッコよく見える。
ボールを追ってる最中から打ち込むまでのフォームや、瞬時にどこに打とうか決断する判断力。
はじめて誰かのプレーしてる姿に見惚れてしまった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 233