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「…咲夜、俺は"悪魔"なんだから」
「それはっ…!」
「いいんだよ…本当のことなんだから」
咲夜には隠している"アレ"を考えたら本当のことなのだから。
クルッと後ろを振り返って下を見ると、咲夜は泣きそうな顔で俺を見ていた。何で咲夜が泣きそうな顔すんだよ…。
そんな顔を見ていたくなくて「部室戻ってるからあの試合終わったら呼びに来て」と言い、返事を聞かずに歩き出す。
悪魔な俺があの人と仲良くしたいなんて思っちゃいけない。それにもう、俺は傷付きたくない。
心ない言葉を浴びせられるのも、この容姿だけで判断されるのも…信じていた人から裏切られるのも。
もう、あんな想いはしたくない。
結局俺も、他人よりも自分が可愛いんだ。傷付けたくないと思いつつ自分が傷付きたくないと思ってるんだから。
1人部室に入って、さっき座っていた所に座る。そして、朝聞いていた音楽プレイヤーを鞄から取り出して音楽を聴く。
これは昔からの癖。何も考えたくない時には1人の世界に入って音楽を聴いている。
試合は10〜15分ぐらいで終わるだろう。それまでにはこんな気持ちを消さなきゃいけないな…試合形式と言っても疎かにはしたくない。
それに、咲夜に迷惑をかけたくないからな。
一つ深呼吸をして自分を落ち着かせるように体操座りをして顔を俯かせる。そして、何度も何度も自分に言い聞かす。
…大丈夫…人に深く関わらなければ傷付くことはないし傷付けることもない。
忘れちゃいけない、自分が犯した罪を。
忘れちゃいけない、自分は人を不幸にする悪魔であることを。
忘れちゃいけない、俺に幸せになる資格なんかないことを。
まるで暗示だと思うかもしれないけど、時折こうして自分に言い聞かす。最近…紫波さんがコーチとして来ることが決まった時から浮かれていたから…。
少し図に乗りすぎていたからちょうどいい。これで軌道修正すればいいんだから。本来の俺…他人に見えない距離を築かなくては…。
「…薺?」
そうしていたら、部室のドアが開いて咲夜が俺を呼んだ。音楽は小音量で聴いていたから人の声は普通に聞き取れる。
試合が終わったのか…一つ息を吐いて顔を上げる。気まずそうに立つ咲夜に音楽プレイヤーを仕舞ってからニッコリと"笑う"。
「終わったのか?」
「…あぁ、だから呼びに来たんだろ?」
「今日はあのペアーに勝ちたいな…俺達どっこいどっこいだし」
「大丈夫だって!俺と薺が組めば怖いもんなんてないだろ?」
「ははっ、確かにな!よしっ、行くか!」
立ち上がり置いてあったラケットを持つ。
大丈夫、まだ"笑える"。
咲夜を抜いて外に出てからもう一度、意味もなく"笑み"を浮かべた。
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