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こうして水入らずの兄弟の時間を過ごすことは好きだ。兄さんも柊君も優しいから俺なんかを大切にしてくれる。
でも、だからこそ…その優しさが苦しいんだ。
それから俺は黙々と兄さんが作ってくれたご飯を食べる。先程の和やかな雰囲気はどこに行ったのか、誰も喋ることはなくなった。
…ほら、やっぱり俺は邪魔者でしかない。兄さんも柊君も俺がいることで楽しんで食事の一つも出来ない。
俺に気を遣う生活なんて疲れるんだから、止めればいいのに…。
そう考えると、美味しかった食事がただの機械的な動作に思えて味っ気がなくなった気がした。
おかしいな…味は変わったりしないのに…。
でも、残すなんてことはしたくないから食べ続ける。全てを平らげて「ご馳走様でした」と言い食器をシンクに置く。
もう今日はここに居るのがしんどいから、早くお風呂に入って歯を磨いて部屋に籠ろう。
「今日は疲れたのでもうお風呂に入って早めに寝ますね」
「そっかぁ…明日も朝から部活だもんね。ゆっくり休んで」
「お風呂入れておくからゆっくりしなよ」
優しく笑いながら2人は言ってくれるのに、それが俺を遠ざける拒絶の言葉ではないかと考えてしまう俺は最低だ。
ありがとうございます、と言って自分の部屋に向かう。
ベッドに寝そべってフワフワのクッションに顔を埋める。
何時からだろう…兄弟に敬語を使うようになったのは…家に居ることが息苦しくなったのは…俺はここに居るべき存在じゃないと思うようになったのは…。
それも全て"あの日"の出来事がきっかけであり、"あの言葉"が始まりだった気がする。
だからこそ、俺は高校を卒業したら誰も知らない土地に行って1人で生きていくと決めた。
誰にも迷惑をかけずに、誰にも深入りせずに生きていく。そう決めているのに、何で思い浮かぶのは頭を撫でる大きくて温かい手なんだよ…。
クッションから少しだけ顔を上げると視界に映るのはクッションの色。
「…こんな汚い俺が、あの人の近くにいていい訳ないんだ」
ボソッと紡がれた言葉に自分で言っておいて心に突き刺さる。
きっと、俺がヤってることを知ったら気持ち悪いと思って蔑むだろうな。咲夜だけじゃなくて紫波さんも…。
俯せから仰向けにゴロンと体制を変えて、クッションを胸元に置いて抱き締める。
「…やだな…人に嫌われるのは」
つい零れた本音にそんなこと今更か…と自嘲気味に笑う。一番嫌われたくなかった人に嫌われている俺が、そう思うことすらおこがましいと思ってしまう。
これ以上こうしているとどんどん堕ちて行くな…と思ったから、気分を変える為にお風呂に入りに行くことにした…。
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