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27.
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紫波さんに群がる奴らを部長や副部長が宥めて試合形式が始まった。
因みに、土曜日はダブルスの試合、日曜日はシングルスの試合で俺は両方に出る。
早く夜になって欲しい焦りからか、初歩的なミスをすることもあったけど試合が近くて柄にもなく緊張していると言えば、誰もが納得して頷いた。
「よし、今日の練習はここまでにしよう」
『ありがとうございました!』
夕方になり1日練習が終わった。そこからいつも通り1年生がコート整備を行い上級生は終わるのを待つ。
俺は兎に角早く、ここを抜け出したかった。
否、紫波さんと同じ場に居たくないんだ。
これから用事があると部活仲間に伝えて、部室で1人、帰る支度をする。
用事って言葉は便利だよな…なんて、くだらないことを考えながら手を動かしていたら部室のドアが開いた。
もう1年生が終わって皆、帰る準備をしに来たのか?と思い振り返ると、そこにいたのは紫波さん1人だった。
これってデジャブだよな?と思いつつ、内心は焦りや後ろめたさや気まずさ…負の感情で包まれている。
「…どうしたんですか?」
「もう帰るのかなーと思って」
「ちょっと用事があるので直ぐに帰らなきゃいけないんです」
平静を保ちつつそれらの感情を表に出ないようにした。この人が悪いわけじゃない。初めて出逢った日に少し話した時は、居心地が悪いとは思わなかった。
俺は自分よりも大人の男が苦手だ。そんなこと言ったら殆どの人がダメになるが…。
面と向かって話をするのが苦手なだけだから、日常生活に支障をきたすことはない。
話は逸れたけど、居心地が悪いんじゃなくて俺がこれからしようとしていることをこの人に知られたくないと言う気持ちがある。
笑ってそう言えば、紫波さんは黒い瞳を細めてジッと俺を見る。訂正だ。居心地が悪く感じる。
まるで俺の考えを汲み取ろうとしているその仕草に正直不快感を感じる。でも、この場から早く離れたい俺は見られているのを気付かないフリして、帰る支度が出来た鞄を肩に掛ける。
「…それじゃあ、また」
何事もないかのようにドア付近に立つ紫波さんの横を通り抜けようとした。が、腕を掴まれたことによってそれは叶わなかった。
「…何ですか?」
「…どうして笑うんだ?」
「…えっ?」
「俺には薺君が無理に笑ってるようにしか見えない…違う?」
その言葉に心臓がドクリと脈打つ。
何でそんなこと言うんだ…俺が無理に笑ってる?そうだね…そうかもしれないけど…。
「…関係ない」
「えっ?」
「"僕"がどんな風に笑おうがアンタには関係ないだろ!?」
俺よりも10㎝以上上にある顔を睨みつけながら怒鳴った。そして、掴まれている腕を解くように思いっきり腕を振って駆け出した。
「薺君っ!」
後ろで俺を呼ぶ紫波さんの声が聞こえるが、それを振り切って学校を後にした…。
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