アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
33.
-
時間になり開店した。初めは人足が少なかったが、1時間もすればそこそこ賑わうようになった。
俺は邪魔にならないようにカウンターの隅でノンカクテルをチビチビ飲みながら、自分の客が来ないかと待ち続ける。
でも、いくら待っても来ない。まぁ、それは仕方がないかもしれないか。俺の常連のお客さんは、俺のシフトをわざわざ聞いて来てくれる。まぁ、別の日も来ないことないらしいが。
元々バイトじゃない今日に来るとは限らない。どの人も凄くいい人で、俺を大切にしてくれる。
だからこそ、俺はまだ"処女"なんだ。
運良く誰か来てくれないかなーと思い待ち続けても、やって来る気配はない。
この、汚れた花を早く摘み取ってしまいたいからここに来たんだけどな…。
何とも言えない気持ちを持ち続けるのが辛くなって、いいなーと思う人をチラチラ見て誘惑しようとしたら、ミキさんにそれがバレて店の裏で説教された。
「ナナちゃん、君が今日、何で店に来たかは直ぐに察しが付いたけど、君が信頼してるお客さんじゃないと誘ったらダメだ」
「…分かってますけど、でも…苦しいんです」
「苦しい?」
「俺がバイト以外の日にここに来るのは、どうしようもない気持ちを持て余した時に来て、お客さんと"肌を重ねたい"からだって知ってますよね?」
「まぁ、"肌を重ねたい"と言っても、最後まではしない約束だろ?」
「だから、最後までするつもりはありませんよ。それがミキさんとの約束ですし俺もそこまでは望んでない」
「分かってる。ナナちゃんが俺と約束したからだけじゃなくて、自分でも望んでないことは」
「だったら…!」
「でもさ、誰もがそれだけで終わると思うんじゃねぇよ」
「……っ」
「お前の客は俺から見てもいい人達ばかりだ。それを忘れるんじゃねぇ」
ニッコリと笑いながら俺を諭すように言ってきたミキさん。こう言う時に笑顔を見せるのはミキさんが怒ってる証拠だ。
この人は笑みを浮かべながらいつもより口調が悪くなるのだ。
俺だって誰でもいい訳じゃない…けど、早く、早くどうにかしなければ。
一層の事、誰でもいいから俺を壊して欲しい。
なんて、矛盾した思いが交差する。
考え込むように顔を俯かせれば、ミキさんが俺の肩をポンポンと叩いた。
その後、何も言わずに出て行ったのはミキさんなりの優しさだって知ってる。
頭を冷やして考える為に、何も言わずに1人にしてくれた。
「…あの人には、敵わないな」
置いてあるパイプ椅子に引き寄せられるように座って上を見上げた。蛍光灯の光が眩しくて腕で目を塞ぎながら、昂ぶっている感情を落ち着かせるのに専念した…。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
34 / 233