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36.
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一口ミルクティーを飲み一息吐く。
何も考えたくなくてここに来て勉強やらをしてるのに、こうしてボーとするといらないことばかり考えてしまう。
最近は専ら、"彼"のことばかりで…。
一昨日、昨日の試合の時、紫波さんとは一言も喋らなかった。否、話し掛けられそうになったら回避していた。
多分、この間の部活終わりのことを話そうとしたんだと思う。
でも今更、何を話すって言うんだ?あの時は俺も感情的になり過ぎていたけど、これ以上踏み込まれるのは嫌だった。
紫波さんは何故無理して笑うのかと問うた。
その答えは至って簡単だ。
…"僕"は"俺"として生きていかなきゃならないんだから。"僕"として生きていくのは"あの日"から止めたんだ。
"僕"が"僕"であることで、多くの人が傷付き不幸になると分かったから。
ペットボトルに入ってるミルクティーを一気に飲み干して、ゴミ箱に入れる。
…もう慣れたよ、作り笑いなんて…。
心の中で冷めた自分がそう答えた。
休憩が終わって図書館に戻る。自分の私物がある席に座ると、予習として英語の教科書とノートを出した。
長文は本文をノートに写してから訳をその下に書き、文法は問題と答えをノートに書き込んでいく。
進級したばかりだからか、あまり難しい問題はない。だから、悩むことなくスラスラと解いていく。
そんな中、分からない単語が出てきた。仕方がないと思い鞄から電子辞書を取り出そうとした時…。
「…あれ?薺君?」
聞き慣れた声であり、会いたくなかった人の声が耳に入った。電子辞書を取り出して机の上に置いてから顔を上げる。
そこには大学帰りなのか…鞄を持った紫波さんと知らない男の人がいた。
…何でこんなとこで会うんだよ…心の中で小さく舌打ちをした。
かと言って、顔に出すのは失礼だと思い愛想良く笑って話す。
「大学の帰りですか?」
「そう、今日は3限終わりだったからレポートを終わらせようとここにね」
「へぇー、地元はこの辺なんですか?」
「まぁ一応、川向こうの実家から通ってるんだよ」
「そうだったんですね」
当たり障りない会話をする。紫波さんは俺が作った笑みを浮かべているのに気付いてないのか何も言ってこない。
そして、あの日のことが無かったかのように、お互いの会話にぎこちなさはない。
そのことに内心ホッとしていたら、紫波さんの隣にいる男性が俺と紫波さんの顔を交互に見ながら口を開いた。
「えっと…どう言う関係?」
その問いはされて当たり前だな、と思った。大学生である紫波さんが高校生と面識があるなんて考え付かないだろう。
俺はチラッと紫波さんを見たら、何故か溜め息を吐いて呆れたような視線を男性に向けた。
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