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「棗、今日はどこ行く?」
「んーそうだな…あ、見たい映画があるんだけど…」
「ん、じゃあ今日は映画デートだな」
「ふふ、楽しみだね」
隣同士に座る2人は幸せそうな笑みを浮かべて今日の予定を決めている。
兄さんと蓮さんの関係は恋人だ。男同士で?と思われるかもしれないが、それはきっと、2人が一番悩んで悩んで、出した結果が今の関係だ。
ワイルド系の蓮さんと綺麗な兄さん…まるで美女と野獣だな。
そんな2人は付き合って数年経ってるが、相思相愛でとても大切にしてることが分かる。
「ナツ兄達の空気甘過ぎ。俺らがいるの視界に入ってる?」
「羨ましかったら恋人でも作れよ」
「蓮さんの知り合いにいい人いないの?」
「生憎俺は、棗を不安にさせるほどバカな男じゃねぇからな…女とは関わらねぇようにしてるから無理」
「はい、ごちそうさまです」
蓮さんと柊君の会話に思わずクスリと笑った。
それを見ていた兄さんが俺を見ながら手巻きするので、何だろう…と思いながら兄さんに近付く。
すると、ふんわりと両頬を撫でられて綺麗に笑う。
「…まだ本調子じゃなさそうだけど、少しは疲れが取れた?」
「…えっ?」
「何でえっ?なの?見てれば分かるよ」
顔色が悪いから心配されるのは分かるけど、いい方向に持ってかれるとは思わなかった。
それと同時に、兄さんの優しさが、痛い。
放っておいて欲しくて関わりを避ける俺に対して、兄さんは一歩引きながらも俺のことをよく見ていてくれる。
何故、俺なんかを気にかけるのか…あの、幸せだった日々を壊したのは紛れもなく俺なのに…。
グッと奥歯を噛み締めて漏れ出しそうな本音を堪える。本音が漏れる代わりに笑みを作った。
「…大丈夫だから心配しないでください」
スルリと両頬に触れてる手を降ろさせる。それに対して兄さんは一瞬、眉間に皺を寄せたが「ん、無理は禁物だからね」と小さく笑いながら言う。
そんな表情をさせている自分が本当に嫌になる。
家でゆっくりしようと思ったが、やっぱり予定変更。
「じゃあ俺、これから出掛けるので」
「えっ?ナズ兄どっか行くの?」
「えぇ、1日休みだしショッピングでもして来ようかと」
「朝ご飯はどうする?」
「大丈夫です、外で食べるので。蓮さんと兄さんも楽しんで来てください」
それじゃあ、と言って2階へ上がって支度をすると、もう一度リビングに顔を出して「行ってきます」と言って家を後にした…。
だから知らなかった。
「…薺はまだ?」
「うん、相変わらずだね」
「でもさ、最近はちょっとおかしいよな?」
「あー確かに…何か焦ってる感じがして危ういっていうか…」
「そうか…早く会ってみたいな…素の薺に」
俺が出て行ったリビングで、そんな会話をされていたことを…。
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