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学校の帰り道にあるファーストフード店。俺もよく利用するここは学生で溢れかえる場所だ。
ただ今は、学校が終わったばかりで制服姿を余り見ないし、そもそも人もちらほらといる程度。
まぁ、俺にとってはその方が話しやすいから有難いけど…。
レジで定番のポテトと飲み物を買って、人が周りにいない端の席に2人で座った。
とは言っても、どう切り出せばいいのか…お互い謙遜し合ってなかなか進まない。
…ここは俺から話さなきゃいけないよな…。
そう思いつつも、正直な話、何を話せばいいのか分からない。
自分の中で混乱していたら、咲夜が話を切り出した。
「…薺にとって俺は、どう言う存在なんだ?」
「……えっ?」
切り出した内容について上手く処理しきれなくて言葉に詰まった。
しかし咲夜は、何も気にすることなく俺の目を見ながら続ける。
「ここ最近、お前顔色悪いぞ?薄っすらとクマもあるし…昼も余り食べなくなってるし…」
「……」
そう言えば、睡眠だけじゃなくて食欲もなくなっていたな…。
言われて初めて気付いた。
ポテトのサイズも無意識にか、Sサイズを頼んでいた。
咲夜が言ったことが全部当てはまってしまい、何も言い返せない。
「それに…」
さらに続けてくる咲夜に、今度は何を言われるんだろうと身構えていたら、一番触れられたくない話をされる。
「…あの人と何かあった?」
「…あの、人…?」
「あぁ…紫波さんと何かあったかと思って」
その人の名前が出たら身体が金縛りにあったように指一本動かせなくなった。
…何で今その人の名前が出てくる?
誰にもバレない筈なんだ…男が男を好きになるなんて考え、"普通"の人では考え付く訳がないんだから。
突然のことに正常に働いてくれない頭。
でも、よく考えれば「何かあった」と聞かれただけで「好きなのか?」とは聞かれていない。
そうだ、まだ隠せる。この気持ちを他人に知られるわけにはいかないのだから。
俺は小さく1回、深呼吸をして笑みを作った。
「何かって?部活で良くして貰ってるだけだけど…?」
「…本当にそれだけか?」
「咲夜こそ何が言いたいんだよ。あの人はいい人だろ?俺の体調と紫波さんは関係ない」
「けど…」
「これは最近の温度変化に身体がついて行かなくて体調がイマイチなだけ。そこまで心配することじゃない」
自分でも驚くほどスラスラと出てくる嘘は、偽りの自分を形成して行くようで…自分の心をより一層黒く染めている気がした。
笑いながら話す俺と複雑な表情をして聞く咲夜。
この正反対の表情を浮かべると俺達は、周りから見たら異質だろう。
でも、周りがどんな目をしても真実は話すべきではないのだから。
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