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「…あれ?あれって…」
その時、窓越しに見覚えのある人物を見かけた。誰かと一緒で楽しそうに話しているのが見て分かる。
…こう言うとこを薺が見ると、嫉妬するんだよな…。
なんて、本人がいないとこで考えても意味ないけど…と思いながら、ボーとその人を見ていたら、不意に相手の視線が此方に向いた。
見過ぎたか…と思ったが、向こうも俺が誰か分かったのか、一瞬驚いた表情をしたが直ぐに表情が笑みに変わった。
…思ったけど、あの人って薺や俺以外で顔と名前が一致してる奴っているのか?
その前に、薺の隣にいるのが俺だから覚えているとかじゃねぇよな?
それはある意味悲しい。
まぁ、別にあの人に好かれたいとかは思わない。てか、親友の恋路を邪魔する邪道な真似は絶対にしない。
相手の人は俺と気付くとその場に立ち止まって手を振ってくれた。すると何やら、隣の誰かと何かを話している。
……これって向かった方がいいのか?
運良く、トレイの上にあるモノは全て食べ飲み干してある。
…ついでに少し聞いてみるか。
そう思いトレイを持って立ち上がった。
急いで全てを片付けて店の外に出ると、紫波さんと俺よりも少し身長が低い男がこっちを見ていた。
「…どうも」
「こんな時間にこんなとこで何してたの?」
この言い方は、「部活が終わったばかりの時間の筈なのに、何でここにいるんだ?」と解釈していいだろう。
その質問に真面目に答えるつもりはないけど…。
「まぁ、薺がほっとけなくて部活サボってここにいました」
このぐらい濁しておけばいいだろ。
すると、隣にいた男が「薺君?」と知り合いのように聞き返してきた。
「…薺のこと、知ってんすか?」
「んー会ったことはあるぐらいかな?」
「そんな感じかな…それにしても、俺に何か聞きたいことでもあった?」
その言葉に目を見開いて驚く。俺って顔に出やすかったっけ?と思ったが、この人の勘が鋭いと言うことにしとこう。
でも、この真面目そうなチャラそうな男がいる前で聞くのもな…と思ってチラチラと見ていたら「コイツのことは空気だと思っていいから」と、何とも紫波さんらしくない言葉を言った。
それに対して「桔梗!最近俺の扱い雑だよな!?」と嘆いていたが、お言葉に甘えて気にすることなく聞く。
「…あの、俺が聞くのはおかしいと分かってますが…薺のことは、どう思ってんすか?」
「……それは、どう言う意味の?」
「えっと……」
「ごめんごめん、意地悪に言い返しちゃったね…俺はさ……」
そこで初めて語られた薺に対しての紫波さんの話。どんな想いを抱いて、どうしていきたいか…。
出逢った時間は短いけど、悔しいぐらいに薺のことを考えていた。
…なぁ薺。自分の気持ちに素直になってみろよ。
お前に何があって"今の"薺になったかは分かんねぇけど…この人なら信頼できる。
薺が幸せになってくれることが、今の俺の願うことだから…。
***
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