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「お疲れ様でした!」
バイトが終わる時間になったから一言ホールに声を掛けて裏へ向かった。
今日は雨にも関わらず、俺の常連さんの1人である佐合さんが来てくれて…約束を取り付けた。
端から見たらこれっておかしいよな…好きな人がいるのに他の男と寝るのは…。
でも、叶わない恋をしているから…諦めているけどこの感情が膨らまないようにストッパーを掛けているのかもしれない。
おかしいと分かっていても止められない…だって、これが俺の"普通"なのだから。
半年も続けていたら生活の一部になっちゃうよ。
私服に着替えていたら、ドアがガチャと音を立てて開くから誰が来たんだろう…と思い意識をそっちに向けた。
「…ナナちゃん」
「ミキさん、どうしたんですか?」
そこにはいつになく真剣な表情をして俺を見据えるミキさんがいた。
わざわざここに来るということは、何か話があるのだろう。
話の内容が全く見当が付かないが、早く終わらせてくれると助かるな…。
「ナナちゃん、今日も行くのか?」
「…はい。でも大丈夫ですよ。ちゃんとミキさんの約束は破ったりしません…」
「そう言うことじゃないんだよ」
俺の言葉を遮るようにミキさんが強めの声色で言い放つ。
人の話を最後まで聞かない彼の姿など見たことがないから驚いた。
急にどうしたんだろう…そう思っていると、ドア前に立っていたミキさんが近付いてきた。
「ど、どうしたんですか?」
「ナナちゃん、最近多くないか?」
「…そうですか?」
「バイトの後は絶対だし、それ以外の日もここに来て誘ってるだろ?」
「…だったら何ですか?ミキさんには関係のないことですよね?」
着替えながら話す俺と傍にある椅子に足を組みながら座ったミキさん。
今まで深く踏み込んでこなかったのに、何故今日は聞き入るのか…。
「関係あるだろ?"薺"、何を焦ってんだ?」
「っ、ミキさん、ここで名前を呼ばないでくださいよ」
突然、滅多に呼ばれない本名を呼ばれた。
薺、とミキさんに呼ばれたのは、ここに初めて訪れた時以来。
だから分からない。ミキさんの本心が…。
「俺言ってるよな?自分を大切にしろって…なのに、人の話を聞かずに遊び回ってさ」
「別に遊び回ってなんか…」
「薺、お前好きな奴が出来たんじゃねぇの?」
「えっ……」
表情は誰が見ても笑顔と答えるが、目を見たら静かに怒っていると分かるミキさんに、前触れもなく言われた言葉。
それは、疑問じゃなくてどこか確信を持った言葉だった。
何で…ここでは当たり前だが彼の話はしたことはない。
それに、何かあったことを悟られるほど表に出していないし、態度だって変わってない。
否定をするよりも何故?が頭を占めて黙ってしまった。
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