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逃げるように走り去った俺は、その勢いで丁度ホームに着いていた電車に乗り込んだ。
涙は流れたままで、数少ない周りの人達からの視線を感じたが止めることが出来ない。
…俺と佐合さんがどんな関係か…聡いあの人なら分かっただろう。
きっとこれは、自分への天罰なのだろうか。
たくさんの人を傷付けたくせに、少しでもいいから幸せに浸かっていたいと甘いことを考えてしまった罰。
…いや、遅かれ早かれバレていたかもしれない。寧ろ、今まで誰にもバレなかったことが奇跡だったんだ。
夜の遅い時間だからとどこか安心していた。
それが仇になったんだな。
終電に近い電車内はいつも通り人は少ないが、俺はドアの横のスペースに顔を向けて静かに泣く。
泣いてる顔を見せたくなくて隠すように俯く。
…きっと幻滅したに違いない。
親しくしている教え子が、夜な夜な男を引っ掛けているなんて…。
まだ、女の子と遊んでいる方が「高校生なんだから止めなさい」と言われるぐらいで済んだかもしれない。
けど、今更なんだ。たらればの話をしても過去に戻りたいと願っても、自分で蒔いた種をそのままにしておけば芽が出て花は咲く。
そして、花が咲いた時に漸く気付くんだ。
…こんなことしなきゃ良かった…と。
過ぎてしまったことを後悔しても仕方がない。
人は後から後悔をする生き物だから、あの時こうしていれば良かった…なんていつもいつも思ってしまう。
自分の家の最寄駅に着いて外に出たら、いつの間にか雨が降り出していた。
【eryngo】に行くまでに雨が降っていたから傘は手にしているが、それを差す気分にはならなかった。
電車を降りて叩きつける雨の中を傘も差さずに走る。
この雨が俺の汚い部分を洗い流してくれないだろうか…それとも、俺ごと洗い流してくれないだろうか…。
もう日付けが変わる寸前の時間だから、人通りは少ない中を走って向かったのは、既に閉館してるルピナスだ。
中に入れないことは分かりきっているが、今の俺にはここしか居場所がないから、敷地内にある濡れているベンチに座った。
街灯ぐらいしかないここは、よく見ないと人がいるとは分からないだろう。
だからこそ、ここなら1人になれるからこそ選んだんだ。
雨なんて気にならないぐらいに堕ちた俺には、こんな場所がお似合いだ。
お似合いだけど…。
「……ふぅっ、ひっく……もぉ、やだぁ…っ」
"独り"だと思い知らされる。
1人で生きていくと決めたのに…彼を好きになったことでもっと頑張ろうと思ったのに…。
好きな人にバレてはいけない秘密がバレて、全てが崩れ去った気分だ。
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