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「…結構近くにあって良かったね」
「はい、この辺って駅から少し離れてるから無理かと思いました」
手を繋いで雨の中探していたら、偶然にもビジネスホテルを見付けて飛び込みでチェックインをした。
平日だと言うことで客室が余っていたが、従業員には怪訝な表情をされた。
当たり前だ、雨で濡れた男2人が1室で泊まると言うのだから。
この人は雨に濡れたことか男2人か…どっちがより怪しいと思ったんだろうな…。
もし男2人がと言うことなら、これが世間一般の目だと再認識された。
「薺君、先にシャワーを浴びて来なよ」
ツインの部屋に入り雨で濡れた身体や髪をバスタオルでお互い拭いていたら、紫波さんが僕にそう言った。
「いや、紫波さんが先に…」
「あぁ、もしかして一緒に入りたかった?」
嬉しそうに聞いてくる紫波さんの目を見れば分かる。これは、僕を揶揄ってるんだ。
そう分かっていても、そんなこと言われたらドキドキが止まらない。
「ち、違っ…僕はっ、紫波さんが風邪引いちゃうと思ってっ…」
「…必死に弁解してるって分かるけど、それが可愛い…」
「へっ!?か、可愛いって…」
可愛いなんて言葉、女子に使うモノでしょ?
でも、その言葉は揶揄っている風には見えないし、本音を言ってるように思えた。
普通は可愛いなんて言われたら不快だけど、何故だか紫波さんに言われたら嬉しいと思う。
これは惚れた弱みだな…とほっこりした気持ちになったが、「一緒にお風呂入る」発言は拒否しなければ…。
「…っ、僕、先にシャワー浴びて来ます!」
「ふはっ、そんな急がなくても覗かないから安心してよ」
「っ紫波さん、何か意地悪ですねっ」
恥ずかしくなったから持っていたバスタオルで目から下を隠しながら言った。
こうやって意地悪なこと言われても、好きだからこそ許せる。好きだからこそ僕だけにそんな彼を見せて欲しいと我儘を言いたくなる。
バスタオルを持ったまま浴室に向かってドアの鍵を閉めた。
「はぁー、紫波さんの、バカ」
ポツリと小さな声で呟いた言葉に何故か笑みが溢れた。
想いを伝え合って、付き合うようになって…"好き"の感情を好きな人と共有出来ることが、今でも信じられない。
このままここで立っていても仕方がないし、早く出て紫波さんと交代しなきゃと思い急いで服を脱いでいった…。
暖かいシャワーを浴びたら冷えていた身体に熱が戻る。
ユニットバスだから浴槽にお湯を溜めることは出来ないが、梅雨の時期になればシャワーだけで十分だ。
しかし、体温は戻るが逆に心は冷えていく気がした。
冷静になって考えたら、僕達の関係は世間一般的には認められない。
男同士なんて不毛なのだから…。
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