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79.
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手渡されたモノを身に纏い紫波さんが出てくるまでベッドに座ってボーとしていた。
時刻は既に1時前、流石にウトウトしてきたがまだ寝たらダメだと思い必死に意識を保つ。
10分もせずに紫波さんは出てきて、ウトウトしていた僕の隣に座ると頭をグイッと引き寄せた。
「…このまま寝る?」
「んっ、でも話が…」
「眠たい時に話しても入ってこないでしょ?」
「…紫波さん、いなくならないですか?」
うつらうつらしている意識の中、聞く気をなかった本音を言ってしまった。
けど、半分夢の中にいる僕はその言葉の意味を理解してなかった。
自分で負の感情は隠し通すと言っておきながら言ってしまう辺り、意思が弱いな…。
「…いなくならないよ。ずっと薺君の側にいるから」
「…紫波、さん」
「付き合ってんだから"さん"付けは他人行儀じゃない?」
長くて細い指が僕の髪を梳きながら、ゆったりとした口調で紡ぐ。
どうやら"さん"付けはお気に召さないらしい。ゆらりゆらり揺れる思考で思い付いたのが…。
「…キョウ君」
「…それって、"桔梗"だからキョウ君?」
「ダメですか?」
「ううん、呼ばれたことないから薺君だけの特別な呼び方だと思うと嬉しくて。じゃあ薺君は…なーちゃん?」
「…キョウ君の意地悪」
「ははっ、冗談冗談。ナズでいい?」
「はい、嬉しいです」
「あと敬語もなしね」
どんどん要求して来るが、正常な判断が出来る思考をしていないから、「うん、分かった」と答える。
本格的に船を漕ぎ出した僕に「こうしてるから寝ていいよ」と肩をトン、トンと心地良いリズムで叩かれた。
…甘えちゃいけない、迷惑かけるかもしれないし離れられなくなる…。
そう思っていても眠気には勝てなくて、心地良い温もりと鼓動に瞼を閉じた…。
***
「…寝たかな」
俺の腕の中で安心したように寝息を立てて眠る薺に、自然と笑みが零れた。
今まで恋人はいたけど、こんなに存在自体を愛おしく思うことはなかった。
ナズが…薺が初めてだ。
「ふふっ、可愛い」
俺の胸に頭を預けてるから覗き込むように見れば、スヤスヤと寝ていて"可愛い"の言葉が当て嵌まっている。
付き合うようにはなったけど、薺が完全に俺に身を委ねているとは思ってない。
それがさっきの質問だ。
寝惚けていたのか、多分言うつもりはなかったことを聞いてきた。
まだまだ薺の中には不安が残っているし、俺を信用はしていないと思う。
でもそれは当たり前だ。俺達は出逢ってから日が浅いんだから。
「…安心して堕ちていいよ、ナズ」
その不安やらあれこれを感じさせないぐらい、俺が愛してあげるから。
だから、いつか、君のことを教えてね。
俺も、教えるから…まだ、過去と消散仕切れていない出来事を…。
薺をベッドに横にさせてから、濡れた互いの服をフロントに頼んでクリーニングに出して、一つのベッドに2人入りナズを抱き締めながら眠りについた…。
***
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