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……夢を見た。
それは僕と紫波さんの未来のことのようだ。
2人共笑っていて端から見ても幸せそうだ。
でも、そんな未来が訪れる筈無いんだ…けれど、夢の中だけなら願ってもいいだろう。
…ずっと紫波さんと共に生きていきたい…と。
「……ナズ」
近くで心地良い声が聞こえてゆっくり目を開ける。開けてまず目に入ったのは見慣れないクリーム色の天井。
そして、枕の代わりに人の体温を後頭部で感じた。
「…起きた?」
「……し、ばさん?……っ!」
もう一度声を掛けられ横を向けば、至近距離で目が合って寝惚けていた頭が覚醒した。
そして、そこで状況を理解した。
ここがホテルの一室だと言うこと。距離が近いのは紫波さんが腕枕をしているからだと言うことを。
びっくりして起き上がれば浴衣が少し着崩れしていて、胸元がザックリ空いていた。
それを慌てて合わせを直し、色々な恥ずかしさから布団を頭から被って身体ごと隠した。
何で腕枕されてたの!?その前に、僕が寝た後に紫波さんは隣のベッドで寝なかったの!?
あらゆる疑問がグルグルと頭の中で回っていたら、不意に蹲っている背中をトントンされた。
「朝だから起きなよナズ。俺に可愛い顔を見せてくれないの?」
「っ可愛く、ないですっ」
「…ナズ、昨日みたいに呼んでよ」
くぐもった布団の中で鮮明に聞こえた少し寂しそうな紫波さんの声。
そんな声されたら応えない訳にはいかない。
僕は布団から顔だけを出して声と同じように寂しそうな表情をしている紫波さんを見ながら、小さな声で呟く。
「…キョウ、君」
「っナズ可愛い!早くおいでよ」
口元を手で押さえながら興奮気味に強請る紫波さん…キョウ君に、爽やかイケメンのイメージが崩れそうになった。
若干引き気味になりながら、おずおずと布団から這い出し差し出された手を握るとグイッと引き寄せられて、キョウ君の胸にダイブ。
「へっ!きょ、キョウ君!?」
「おはよう、ナズ」
「お、おはよう…」
ギュッと抱き締められると無意識に、背中に手を回していた。
キョウ君の温もりにこのままでいたいと思う反面、甘えちゃいけない…と相反する感情が戦っている。
けれど、それよりも重要なことを思い出した。
「っ!今何時!?」
「今?……8時半…完璧に遅刻だね」
備え付けてあるデジタル時計を確認するが、既に遅かった。
まず8時25分から始まるSHRが終わっているし、制服持ってないし…あぁ、家にも学校にも連絡してないや。
考えれば考えるほど冷や汗が出てくる。
そんな僕にキョウ君は提案をする。
「どうせ今から行っても2限ぐらいからしかいけないし…休んじゃえば?」
「…キョウ君、大学は…?」
「俺は昼からあるけど…」
僕の肩を持つと離されて、黒い瞳と視線が交わった。
「今日はナズと一緒にいたいから休むよ」
そう甘い宣言をされた。
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