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椅子に座り鞄から教材や筆記用具を取り出す。キョウ君はルーズリーフと筆記用具とスマホを取り出してから、「本取ってくるね」と言って席を立つ。
僕は英語から始めて分からない単語は電子辞書で調べる。
その隣で帰ってきたキョウ君は、本を開きながらルーズリーフにメモ書きを残していく。
こう見ると、高校生と大学生は勉強の仕方が違うと思う。
問題を解くことが主流な高校生、自分で調べてそれを文章に起こして解明していく大学生。
違いを実感させられる瞬間だ。
「…そんなに見つめられると集中して出来ないんだけど」
「へっ、ご、ごめん!」
どうやら考え事をしながらキョウ君をジッと見ていたらしい。
無意識って怖い…そう思い、一言謝って自分の勉強に目を向ける。
今まで訳していた英文の内容を忘れてしまい、もう一度前の部分を読み返した。
クスッと笑われたが気にしない。
そうやって英語の宿題を終わらせて、残っている数Bの宿題をやらなければいけなくて憂鬱になる。
特にベクトルの問題は嫌いだ。向きや大きさの量を矢じるしを使って表すものだが、これを使って応用問題を解いていく。
計算だけでは済まないこの問題は、文系の僕の頭では意味が理解できなくて苦戦している。
近々中間テストがあるが、赤点を採るんじゃないかと不安で仕方がない。
はぁ…と溜息を吐いて机に突っ伏した状態でいたら、「分からないとこでもあるの?」とキョウ君の声が聞こえた。
「…うん、数Bの宿題が出されてて…一番嫌いな科目だからやる気出なくて…」
「あーナズは文系?」
「うん」
「確かに数Bって文系にとったら嫌な科目だよね。俺も好きな科目とは言えないし」
「あれ?キョウ君って文系?理系?」
「俺も文系。でも人並みに理数科目もできてたよ」
あ、意外。経済学部って言ってたからてっきり理系かと思ってた。
そう言ったら「理系出身者もいるけど、数学とはまた違った分野だからね」と笑って言う。
やっぱり大学は違うなぁ…今まで自分が大学に行く姿を考えたことはなかった。
1人で何処か遠いとこで生きていくと決めていたから、大学には通わず働くつもりでいた。
けれど、今の僕には迷いが生じている。
一緒に生きていきたい…そう言ってくれたキョウ君を裏切ることはできない。
僕も一緒にいたい…けれど、この場所に留まることはしたくない。
誰も知らない所でひっそりと暮らしたい…その願いは今も変わらないから。
「…ナズ?ボーとしてどうかした?」
「えっ?何でもないよ…いいなー、理数科目もできて…僕は歴史と英語がイケる生粋の文系だから」
考えを悟られないように話題を続けた。
これはもう少し後で考えよう…今は考えるべきじゃないと思うから。
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