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102.
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太陽が落ちて辺りが薄暗くなってきた。
そろそろ帰ろうか、とキョウ君に言われて教材を仕舞う。
どうやらキョウ君はレポートがある程度終わったらしく、途中から僕の勉強に付き合ってくれた。
まだ6時半…家に帰ったら兄弟と夕ご飯を食べなきゃいけない。
今この瞬間が幸せだから息が詰まるあの家に帰ることは憂鬱だ。
はぁ…と一つ溜息を吐けば、「どうかした?」と心配そうに言われた。
「…ううん、何でもない。今日はありがとう」
「…後半は合格だけど前半は不合格」
「えっ…?」
合格?不合格?一体何の話をしているんだ?
よく分からなくて首を傾げてキョウ君を見上げる。
ふぅ、と一つ溜息を吐くと僕の頭をクシャクシャと撫で出した。
「何でもなくないのにそうやって言わない。俺には隠し事なしだよ」
「隠し事って言うほどじゃ…あ」
「うん、墓穴掘ったね」
言うつもりなんかなかったのに、ついキョウ君の口に乗せられて言ってしまった。
これは、詳しく話さなきゃダメなパターンだ。
けれど、余り言いたくなくて見上げていた顔を別の方向へ向ける。
「ナズ、話さないつもりならナズを家に送るよ」
「っやだ!家には帰りたくないっ」
別の方向に向けていた顔をもう一度戻して訴える。
思わず駄々を捏ねる子どもみたいな言い方をしてしまい口を手で塞ぐ。
こんなことで取り乱す自分が恥ずかしい。
どうすればいいか分からなくなり鞄を持って図書館から出ようとした。
「落ち着いてナズ。はい、深呼吸」
が、その前にキョウ君が僕の腕を掴んで捕まえてくれた。
周りに人は少ないがバタバタするのは良くないことだから、止めてくれてホッとする。
キョウ君の言われた通り深呼吸をして自分を落ち着かせることに徹した。
「ナズはいつも混乱すると落ち着きがなくなって、そこから逃げ出そうとするね」
「うっ、言い訳できません…」
「1人の時にそうなったら俺は心配だよ」
「でも、キョウ君に出会う前はこんなことなかったよ」
まぁ、中学生の時は男の人に触られると自分でも信じられないほどの拒絶を見せていたけど。
キョウ君にはまだ言わないけどね。
落ち着いた僕の手を引きながらルピナスの外に出て、敷地内にあるベンチに二人で腰掛けながら話を続ける。
「じゃあ、俺に出会ったことでナズはナズらしくなれたのかな?」
「…僕らしく?」
「そう、今のナズか本当のナズだろ?今まで気を張っていたから、常に自分に厳しくしてたんじゃないかな?」
僕の頭を撫でてからクイッと引き寄せられ身体の半分が大好きな温もりに包まれた。
けれど、ここはまだ薄暗い外なわけで…通行人にチラチラと見られる。
「き、キョウ君!ここ外だからっ」
「えー外でも気にしない。俺はいつでもナズを愛でたいんだから」
「愛でるって…僕ペットじゃないし!」
話の割には和やかな雰囲気が僕達の間に流れた。
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