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ゲイバーと言うからどう言った所か不安だったが、落ち着いた雰囲気が漂う空間にホッと息を吐く。
薺にゲイバーでバイトをしていると聞いた時、本当はその場で"辞めて欲しい"と言いたかった。
けど、それは薺の一部を否定することだと思い言わなかったが。
それに、今なら自分の本音を言わなくて良かったと思っている。
だって、薺は楽しそうに働いているんだからな。
「…今のナズ、生き生きしてるよ」
ボソッと誰にも聞こえない声で呟き口元を緩める。今でもまだ、自分"なんか"と言い過少評価をする部分がある。
きっと、今すぐに直せと言っても無理だと思う。
多分、そう言っている自覚がないんだろう…"あの人"も自分が病んでいることを分かっていなかったのだから。
…あぁ、嫌なことを思い出してしまった。
俺は自分の中で燻るナニかを消したくて、ギムレットを口にしてフルーツを食べる。
もうあれから15年以上は経っているのに、不意にあの日々が思い起こされて心が沈む。
はぁー、と一つため息を吐いていたら、隣の席からカタッと音がしたから其方に目を向けた。
「お兄さん、1人でこんな隅にいたら勿体無いよ」
椅子に座って話しかけてきたのは、俺と同じ私服を身に纏い妖艶な笑みを浮かべる男。
男にしておくのが勿体無いと思うのは仕方がないだろう。
何故俺に話しかけてきたのか考えた時、薺に言われたことを思い出した。
『キョウ君が来たら注目の的になるよ!』
あの時は、俺よりもイイ男なんてたくさんいるから大丈夫だろうと思っていた。
けど、これは明らかに狙われている。
俺は自分でモテる容姿をしていると自覚している。だから、相手が俺に気があるかどうかは何となく分かる。
この人はまさにソレだ。
さて、余り薺を不安にさせたくないからな…どう切り抜こうか…。
「いえ、俺はここで十分ですよ」
「そう?1人酒もいいけど2人で飲む酒も美味しいよ?」
「ふっ、1人じゃないのでご心配なく」
相手をかわしながら意識は薺に行っている。
今の所ホールにはいないから裏で何かしているのだろう…できたら、そのまま裏に居て欲しいものだが。
それにしても、この人が徐々に距離を詰めているのは気のせいか?
「誰かと待ち合わせ?じゃあさ、その人が来るまで俺と飲んでいようよ」
「ごめんなさい。俺恋人がいるから貴方とは飲めません」
「そう硬いこと言わないで…1杯だけでいいから、さ?」
不意にテーブルの上に置いている手に自分の手を重ねてきた。
それを不快に思い、振り払って一言言ってやろうと思ったら…。
「あれ?堂々と浮気?」
と、真後ろから聞いたことがある声がした。
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