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そう言った後の店内が今まで以上に騒がしくなった。
騒がしい…と言うより、あちこちから拍手が湧いたり歓声が湧いたりと好意的な声が多い。
…あぁ、そうか。この人達も俺達みたいな奴らと"同じ"なんだ。
男と女が結ばれた時、周りは幸せな気持ちになり祝福をする。
それは、男同士でも言えることで…そこに性別は関係ないのだと身に沁みた。
世間一般的には認められない関係を認めてくれる人がいる…それは必ずしもいるとは限らない。
そう考えた時、自分達はなんて幸せ者なんだろうと心が熱くなった。
「きょ、キョウ君…っ」
「ふふ、これで牽制になったかな?」
「もうっ、キョウ君の魅力は僕だけが知ってればいいんだからね!」
「何それ、嫉妬してんの?」
顔を真っ赤にして下から睨んでくる薺を見ても、可愛いとしか思えないのは当たり前だ。
クスッと笑いながら頭を撫でてやると睨んでいた筈の表情が嬉しそうに笑った。
今すぐ抱き締めてもう一度キスしたい衝動に駆られるが、薺は今仕事中だ。
ここは、大人である俺が我慢しなければ…。
「今のなーちゃん可愛くなかった!?」
「ナナちゃんはいつも可愛いだろ。それにしても、そっちが素のキャラか」
「なーは僕っ子だったんだな…彼氏もイケメンだし羨ましい」
…と思ってたけど、店のスタッフが俺達の周りに集まってきた。
薺は言われたことに対してあたふたとするから、落ち着くように「ナナ」と声を掛ける。
「うー…やっぱりキョウ君には名前で呼んで欲しい…かも」
「…っ」
「あ、彼氏さんの顔が赤くなった」
薺よりも背の小さい可愛いスタッフに指摘されて、サッと手の甲で口元を隠し視線を逸らした。
うわっ…急に言われると照れる。だってさ、それって俺だけは"ナナ"としてじゃなくて"薺"として見て欲しいってことだろ?
そんな些細なことで、俺は薺の"特別"だと認識させられる。
「んんっ!ねぇナナ?ナナの名前はここで知られてるの?」
「えっ?ううん、知ってるのはミキさんだけだけど…何で?」
薺がミキさんと呼んだ人を見ると、4人の中で1番の年長者だと思う。
もしかしたら、ここの店長かな?
それなら尚更…。
「じゃあ、ここでは呼びたくない」
「…何で?」
「だって、ナナの本当の名前をここの人に知られたくないから」
「っう!ズルいっ」
俺の言葉にまた顔を赤く染める薺に、この子の豊な表情を曇らせたくないと思う。
だから…。
「っ、何で…何でその子の方がいいんだっ」
もし、俺の大事な大事な…。
「僕知ってるんだからね!ナナちゃんが…」
宝物を傷付けて、泣かせる奴がいるならば。
「不特定多数の男と寝てるってこと!」
俺は何があっても、許さない。
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