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「この子のことを何も知らないくせに、人の一部をさも悪いかのように話しやがって…」
「っ!ぼ、僕はただ…っ、ナナちゃんが何をしているか知っているだけで…」
「だから、"ナナ"のことしか知らない奴が出しゃばるなって言ってんのが分かんねぇのか?あぁ?」
あーダメだ。頭では自分がキレていると分かっているのに、身体が言うことを聞かない。
知っているってだけで、それが事実だと信じて疑わずに言いふらす奴の神経を疑うよ。
男と距離を詰めると、自分よりも10㎝以上小さい男の胸倉を掴んだ。
「ちょっ、紫波君っ」
今まで口を出して来なかった佐合さんが、俺の腕を掴んで離させようと引っ張るが、それを無視するように胸倉は掴んだまま。
こう言う奴は自分の方が可愛いから、そんな自分が相手して貰えないことに嫉妬する人種だ。だったら、その鼻先をへし折って、二度と薺を傷付ける真似ができないように…いや、薺の前に現れないようにしてやる。
「自分は可愛いから周りからチヤホヤされて当たり前。チヤホヤされないなら癇癪起こして注目を浴びたい…お前の頭はオメデタイな。そのオメデタイ頭じゃ人の気持ちを理解することは無理だな」
「なんで…そんな酷いこと…っ」
「悪いんだけど、計算された泣き落とし見るとイライラするんだよね」
思わずチッと舌打ちをすれば、何処からか「ギャップが…」とか「爽やかイケメンが舌打ち…」なんて言葉が聞こえてくる。
人は見かけによらないって言うけど、これって自分のことだと認識してるからあーだこーだ言われても気にならない。
「あの子がどうしてそう言うことしてたか何も知らないくせに…"知っている"だけは時に残酷だって覚えておけ」
「っうう…ヒック…ぅえっ」
「泣かれるとイライラするって言わなかったか?まっ、どうでもいいけどさ…これだけは言っとくわ」
ずっと掴んでいた胸倉から手を離し、掴んでいない方の手でもう一方の手をパンパンと埃を落とすように叩いた。
「俺にとったらお前みたいな性格ブス、眼中にないから。ついでに、俺の"ナズ"の方が何百倍も可愛いから…二度と俺らの前で自分は可愛と思うな。分かったな?」
「ヒイッ!わ、分かり、ましたっ!」
あれ?一応ニッコリ笑って言ってるのに、何で恐ろしいモノを見たみたいな反応してるの?
そんなこと思っていたら、男はカウンターに金だけを置いて走って出て行った。
その瞬間、「よく言った!」「ナナちゃんの彼氏カッコいい!」とか称賛された。
そんな周りの姿に苦笑いを零していたら、佐合さんに「紫波君、ありがとう」と礼を言われた。
俺は何もしてない。ただ、薺を傷付けたことが許せなかっただけだ。
そう思っていたら、「彼氏君」と呼ばれて後ろを振り向けば、店長だと思われる人が手巻きしていた。
「はい?」
「店でのいざこざを君にまかせて悪かったね」
「いえ…俺も折角の楽しい時間を潰してしまいすみませんでした」
「ははっ、ギャップが凄いな…で、裏の扉を出て突き当たりに仮眠室があるからさ、ナナちゃんのこと慰めてくれない?」
そう言われて薺を見れば、俯いているから顔は見えない。その姿に胸がズキッと痛み、余計なことを考えられないほど甘やかしたくなった。
俺は薺の身体を支えるように肩に手を回し、店長さんに言われた部屋へと向かった…。
***
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