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119.
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嬉しかった。
キョウ君が僕の為に怒ってくれるのが…。
でも、それと同時に、怖くもなった。
僕を守る価値が失った時、彼が離れてしまうんじゃないかと。
今でもふと偶に、彼の隣にずっといることは無理なんじゃないのか?と思ってしまう。
手放す気はないと言われたが、人の心はいつ変わってしまうか分からない。
だって、確かにあの時までは…僕達"家族"は幸せだった。"兄ちゃん"がいて"柊"がいて、"母さん"がいて……"父さん"がいた。
けれど、父さんは変わってしまった。いや、父さんを変えてしまったのは僕なんだ。
僕の所為で家族はバラバラになった。それは、誰が何と言おうと変わらない事実。
だから怖いんだ。
肩を引き寄せている手が、届かない場所に行ってしまうことが…。
ミキさんに言われて入った仮眠室は、僕も何度か使ったことがある部屋だ。
ベッドと小さなチェストだけが置かれている。
キョウ君は僕をベッドに座らせると、自分は僕の前にしゃがんで見上げてきた。
その体制だと俯いている僕の顔が見えてしまう。
ねぇ、今の僕はどんな顔してる?
悲しんでる?泣いてる?それとも…。
「ナズ、そんな諦めたような表情しないで」
「…あき、らめた…?」
「どうでもいいような顔してる」
そう言われて思わずベッドにうつむせで丸々ようにして顔を隠した。
自分ではそんな表情をしているつもりがなかった。てか、そんな顔するのはキョウ君に失礼じゃん。
さっきのやり取りのどこに、諦めることがあった?
怖いよ…具体的には分からない恐怖が僕を包む。
「…薺、こっち向いてどう思ってるのか話して」
「…っ」
「俺はどんな薺でも受け止める。だから怖がらなくていいよ。寧ろ怖がるなら俺が抱き締めて安心させてあげる」
そう言って丸々僕を背中から包み込むように抱き締めた。
微かに震えていた身体は、彼の温もりに包まれると震えが止まる。
そして、もっと欲が出た僕はキョウ君の腕の中で身体を動かして、首に手を回すとその勢いでキスをした。
「んっ、ん…ふぁっ、ぁう」
「…後でキスでも何でもしてあげるから、今は話をするよ」
「…こうやって、いつか僕のことを離すの…?」
包まれていた腕から身体が離され温もりを一切感じなくなった。それが引き金となり、不安が顔を出す。
そんなこと言われると思っていなかったのか、キョウ君は目を見開いて言葉を理解しようとしているようにみえる。
「えっと…いつも言ってるでしょ?薺を手放す気はないって」
「そんなの分からない…人の心なんてどうなって行くか誰にも分からないんだから」
「そうかもしれないけど…急にどうしたの?」
僕の様子がおかしいと思ったのか、離れていた距離が再びゼロになる。
心の何処かでずっと不安はあった…けど、それが今回表立つようになったのは、自分の行いが周りにとったらどう映っているか身に染みたからかもしれない。
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