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今までも、自分がやってることを正しいとは思ったことはない。
そしてそれが、こうして露見することも考えていなかった。
あの時…僕がそう言うことをしているとお客さんが知った時、誰もが信じられないと言う表情の中に軽蔑を垣間見た。
その後直ぐに、キョウ君が僕を庇ってどうにか事は収まったけど。
もし、キョウ君が口を出さなかったら、僕への不信感は拭えていなかっただろう。
「…僕は…僕だけが悪く言われるのは慣れているからどうだっていいんだ」
「どうだっていいって…」
「でもね、僕の所為でキョウ君まで悪く言われるんじゃないかって考えたら…っ、耐えられない」
「……」
「それに、僕の全部を知った時…少なからず、僕のことを"汚い"って思うよ。そしたら、いくらキョウ君でも離れてい…っ」
離れて行くよ、と最後まで言い切ることができなかった。
それは、単純な理由だ。抱き締められたままキスで口を塞がれたから。
深くない、触れるだけのキスだけど、僕を落ち着かせるには十分なモノ。
ゆっくりと離れる唇を自然と目で追っていたら、「薺」と呼ばれてキョウ君を見る。
彼の表情は真剣かつ怒っているような哀しんでいるような…そんな表情をしていた。
「…ねぇ、一体何回言えば分かってくれる?」
「な、にが…」
「俺はどんな薺でも離れる気も、離す気もないってこと」
……一体、僕は何度同じことを繰り返すのだろうか?
それでも、自分の中で拭えない不安は消えることがない。
立膝を付いて僕との目線を近付けるキョウ君から視線を逸らす。
彼の瞳は全てを見透かしてしまいそうで、ずっと見ていると僕の不安を暴かれそうで怖い。
「…チッ、アイツの所為で今までの俺の努力が水の泡じゃねぇか…」
「えっ、何て?」
「ううん、何でもないよ」
一瞬、僕から視線を外してボソッと何かを呟いたキョウ君に問いかけるが、笑顔で何でもないと言われてそれ以上聞けなかった。
…舌打ちも気のせいかな?
「あのね薺、俺は何度でも言うよ。薺を手放すつもりは毛頭もないって」
「…僕なんかと付き合ってると、キョウ君まで悪く言われるよ」
「聞くけど、薺と付き合ってることは悪いことなの?」
「っ、その聞き方はズルいよ…不毛だと思わないの?」
「何が?」
「僕と…男と付き合うことに対して」
話している途中に膝の上に置いてある手をギュッと握り締められた。
キョウ君がどんな答えを出すのか…それが怖くて顔をうつむかせる。
数秒の沈黙の後に聞こえたのはキョウ君の溜息。それにビクッと身体が震えたら、座っているベッドの沈みが大きくなり、温かい温もりに包まれた。
「バカだな、薺は。好きになって付き合いたいと思った相手が男だけであって、男女の付き合い方は違うの?女とは幸せになれて男とは幸せになれないの?」
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